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テーマ:好きなクラシック(2282)
カテゴリ:クラシック音楽
ナチスの武装親衛隊に所属していたことを告白したノーベル賞・ギュンター・グラス氏の自伝に予約が殺到し、9月からの発売予定を前倒ししてすでに発売が開始されたらしい。こうしたニュースを聞くにつれても、戦後61年経ってもあの大戦はまだ終わっていないのだという思いを新たにさせられる。
クラシックを聴いていると、その長い歴史の中で戦争がテーマになっている曲が多いのに気づく。大元を辿れば、音楽は軍隊の士気を高めるための「行進曲」から発達してきたこともあり、また、19世紀も20世紀も戦争が絶えなかったこともあって、音楽の題材には困らなかったということもあるだろう。 ショスタコーヴィチのように、独裁国家の中にあって我が身を守るため無理矢理曲を書いた(書かされた)人もいる。なにせ独裁者のお気に召す曲を書かないと処刑されてしまうのだから、いくら才能があっても迎合せざるを得ない。彼の交響曲の殆どは戦争やソビエト革命をテーマにしている。 ショスタコの交響曲第7番「レニングラード」はいわゆる「戦争を題材にした曲」としては最大規模の作品だろう。演奏時間は90分近く、フルオーケストラの咆哮が聴衆を圧倒する。 今はなきレニングラード(現在のサンクトペテルスブルク)にナチスドイツ軍が押し寄せる。街は完全に包囲され、2年近くに渡って市街戦が続き、最終的にソ連軍が街を解放する。その悲惨な闘いの模様をショスタコは巨大な音の城塞に仕立て上げた。 この曲の西側での初演はトスカニーニが勤め、またたくまに世界各国で演奏される人気曲となった。しかし当のショスタコは後年、「証言」の中で、「あの曲は、スターリンが破壊し、ヒトラーがとどめを刺したレニングラードを主題にしたのだ」と述べている。 戦争を主題にしたといっても様々な理由がある。今年、ナクソスから発売された大木正夫の交響曲第5番「ヒロシマ」は、原爆の惨禍をこれでもかと描いた悲しい音楽。日本のクラシック音楽の歴史は短く、戦争にまつわる作品は第二次大戦、特に原爆をテーマにしたものが多いが、この曲はその最右翼たるものだろう。 グラス氏のニュースを読みながら、彼はこの61年間、ショスタコの音楽を聴いたことがあったのだろうか、とふと考えた。おそらくはあるだろう。ではシェーンベルクの「ワルシャワの生き残り」はどうだろう?グレツキの「悲歌のシンフォニー」は? 音楽は人を癒す力があるが、辛い記憶をとどめる役目も背負っている。 楽天にはトスカニーニ盤がないようです バーンスタイン/ショスタコーヴィチ:交響曲第7番&第9番 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年08月20日 18時56分31秒
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