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2014年03月13日
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カテゴリ:邦画

五社協定の枠を超え制作された 日本映画幻の巨編

黒部の太陽
1968年 日本 196分

■監督 熊井啓
■出演 三船敏郎/ 石原裕次郎/ 辰巳柳太郎
樫山文枝/ 宇野重吉


石原裕次郎生誕80年記念の一環で 2014年3月8日 BS日テレにて
日本初ノーカット放送され

録画した後 ゆっくり観ようと思っていた 本作だったのですが

裕次郎が出てくるまでの間位は 放送を観てみようとして
結局 ラストまで観てしまうというw

巨匠 熊井啓監督の気迫に満ちた演出で 世紀の難工事と言われた
黒部ダム建設の トンネル工事を描き

日本映画界にとっても、他社の作品に俳優を出さないという
映画業界全体を守る業界挙げての取り決め

五社協定 の枠を超えて 大スター同士の共演が叶った 超大作で

長年 石原裕次郎の遺志でこれまで ソフト化もテレビ放映もされず
幻の作品となっていた 『黒部の太陽』 を ご紹介します

- STORY -

富山県黒部川上流に関西電力が建設する第四発電所。
現場責任者には北川(三船敏郎)が任命され

資材運搬用のトンネル掘削は熊谷組が担当することになった。

熊谷組の岩岡源三(辰巳柳太郎)の息子である剛(石原裕次郎)は
父の強硬なやり方に反発し設計技師となっていた。

現場に赴いた剛はそこで体力が衰えてしまった父と、
熱心に工事に打ち込む北川の姿を見て、

工事に参加することにする。

やがて工事現場では山崩れが起こり大量の水が流れ込んだ。
北川は自分の娘が白血病に冒されたことを知るが、工事現場を離れることが
できなかった。

- 解説 -



本作は世紀の難工事と言われた 黒部ダム建設の資材運搬用の
トンネル工事を描いた作品で

主に 『破砕帯』と呼ばれる
岩層が脆く地下水が吹き出す危険地帯を突破するまでの苦難が

クライマックスとして描かれております


電力会社や建設会社を実名で出し 映画の主役はトンネル工事そのものという
NHKの 『プロジェクトX』 の様なタイプの作品ですが

「5社協定」と呼ばれる
当時の映画会社専属俳優の引き抜きを認めないという成約を越え
東宝 日活の2大スターが共演が実現した

未曾有の群像劇で描かれる ヒューマニズム巨編です



本作で最も印象に残るのは

島田正吾とともに 新国劇を支えた 名優 辰巳柳太郎演じる
現場下請け業者社長で 裕次郎演じる 剛の 父親 岩岡源三 でした

有り体に言えば『巨人の星』の星一徹を見る様な頑固おやじですが
息子役の石原裕次郎との言い合いの場面では

それこそちゃぶ台やそこら中にある物を投げつける様な
すぐ激昂する猛獣の様な男

戦後日本には良く居たタイプの人間だと言えます

作品中で 源三は、 工事中に破砕帯にぶち当たり
地下水が濁流となって作業員達を正に飲み込もうという その時まで

逃げようとする作業員達を 狂った様に棒で追い立てて殴り付け
現場へ引き戻そうと常軌を逸する行動を行い

三船敏郎演じる現場主任に殴られ気絶するまでその行いを 止めないという
工事に取り憑かれた様は 狂気に満ちていました

現代では確実に犯罪行為となる様なこれらの行動も

戦前戦後の昭和の混乱期には
おおよそ工事とは呼べない様な命がけの工事が当たり前の様に横行した事から

その様な土木作業を成し遂げるには
これ程の荒々しい気性の持ち主で無ければ 通用しない程

末端の作業員は 毎回 命がけの工事を強いられる様な
時代だった事を物語っていると言えます


その様な工事現場に集められる 荒々しい作業員達を取りまとめるには
正に鬼の様な人格が 必要不可欠だったと言う事なのでしょう



熊井 啓 監督は 毎回 末端の立場にある人間を取り上げた映画の企画を立て
決して美化すること無く、エネルギッシュに 気迫に満ちた演出で
人間性 を描いて来た 社会派の映像作家です

作品の舞台となった60年代の日本は正に高度成長期にあたり
安定した電力の供給が 不可欠な状況にあり

そこで火力主体の電力の不足分を柔軟にカバー出来る水力発電の
巨大ダム建設は必要な事 という

ダム建設反対が主流の世相の現在とは異なった価値観の中で
土木建設とその困難な作業に関わった全ての人達を称える様な映画化でしたが

(73)『朝やけの詩』 では一転して
村人を丸め込み 村を潰して強行に観光施設建設をする
大企業の環境破壊問題を取り上げ
田中政権下で土木工事が全盛となった時代の弊害と批判を描いており

全く真逆の立場でも映画を撮る多様性のある映画監督と言えますが

そのどちらも
困難に立ち向かう人達の姿をエネルギッシュに描いているという点に於いては
同じ見地で描いていると言えます

本作では冒頭で三船敏郎演じる北川が 登山者しか足を踏み入れない立山を
調査隊一行とともに登頂し 対岸の谷からアプローチした別働隊の一人が
足を滑らせて落下する所を

為す術も無くただただ見ている場面があり

ラストシーンでは
様々な登場人物が様々な想いで 完成したダムに訪れる場面がありますが

巨大な自然の脅威に人間が挑むのは
勝ち負けの無い戦いに挑む人の生き様を見る様でもあるという

巨大な困難に対しての「無力感」と
それを成し遂げて達成した時の「無の境地」を
異なる視点で描いたものと言えるので

異なる事の様に見える状況も 根底には同じ背景がある事が分かる
ヒューマニズムを描く監督だからこそ描ける多様性だと

言う事だと思います




△▼△▼△▼△

トンネル工事を描いた映画に 高倉健主演作(82)『海峡』という作品がありましたが
こちらは作業員達が非常にキレイで優等生に描かれていた為

過去を持ったキャラクター達の 泥臭さとは 分離された状態で物語は進むので

『日本沈没』『八甲田山』の名匠 森谷司郎監督の テーマは
大事業の達成を 高らかに描く所にあった様に感じ

そういう意味では 本作とは真逆の描き方をした作品と言えるのでしょう

- 5社協定の壁に男泣きした裕次郎 -

当時の邦画界の取り決めだった 専属俳優の引き抜きを固く禁じた
『5社協定』 の壁の為に、キャスティングが決まらず

裕次郎は 映画界とは無縁の 演劇界の重鎮で 劇団民藝の主宰者だった
宇野重吉に協力を仰ぎます

裕次郎の熱意に動かされた宇野重吉は全面的協力を約束すると

次々にキャスティングが決まり
厚い壁となっていた『5社協定』も 嘘の様に緩まり

三船敏郎との共演も実現したと言います。

当時33歳の若き裕次郎は絶望から 人知れず泣いたと言いますが

『あの涙は何だったのだろうという位に 全てがうまく言った』と
当時を振り返ってまき子夫人はインタビューで そう語っておりました


- 420トンの水に押し流される事故 -



狂った様に作業員を追い立てて 作業場に押し戻そうとする 辰巳柳太郎 を
三船敏郎 が殴り付けて気絶させ 裕次郎と共に退避する背後から

巨大な濁流が 材木もろとも凄い勢いで押し寄せて
裕次郎達もろとも押し流す所でストップモーションをかけるという場面がありますが

これは 想定よりも2倍の圧力で押し流された水に
俳優たちが 本当に押し流された場面で

ストップモーションになったのも ここから先が本当の事故となった為
これ以上は映せないという事情があった為だった様です

それもそのはずで
この場面では 裕次郎をはじめ 数名の負傷者を出し

必死に走る三船敏郎達の姿も 演技では無かったとの事でした

後に裕次郎夫人の 石原まき子(北原三枝)さんはインタビューで
怪我をしたのが 裕次郎以外いなかった事にホッとして

とっさに『良かったわねー』と口に出した事を ずっと根に持たれたと
笑いながら話していました。

その まき子夫人は本作を

『敗戦の焼け野原から、国土の復興と文明を築いていく日本人達の勇気の記録』
と説明し

東日本大震災復興支援を目的に
本作のチャリティー上映会を行なったのが 2012年の事

同年3月には NHK-BSプレミアムで 短縮版の本邦初のハイビジョン放送が行われ

『大きなスクリーンで観て欲しい』という 裕次郎の遺志が尊重され
これまでソフト化はされませんでしたが

石原プロモーション創立50周年の一環として
40年以上もの時間を経て 遂にソフト化がされました

『ファンの人もお年を召したので 家でユックリ拝見して貰いたい
 天国の祐さんもヒョットしたら許してくれる』と まき子夫人は語っていましたが

若き裕次郎が制作に没頭した 正に裕次郎の一部とも言える本作を
自宅で観賞出来る様になった事は

ようやく夫 裕次郎が帰宅した様な そんな想いで話されていたのかもしれません。

Y.I『めでたくDVD Blu-ray化されたのは良いケド
増税前に買うべきかなあ・・・』


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最終更新日  2022年10月14日 02時13分16秒
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