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カテゴリ:謎
市場で花を仕入れていた
同じ花ひとつをとっても、仲卸の店によって微妙に価格が違う なので、勇み足を踏んですぐ購入してしまうと、別の店を見て「こっちの方が安かった…」なんて悔しい思いをするので、一通り見て廻ってみて、その中で一番安いところから仕入れるようにしている この感覚は、主婦の方が買い出しに行くのと殆ど変わらない えぇ、自分は財布の紐硬いんです 一通り仲卸を見てまわると、一軒の店の前で足を止めた それは今日の仕入れで一番のお目当てのもので、値段も他所のところに比べると一番安い 見る限りではモノも悪くなさそう 店先に並んでいるもの全て買おうと、厳密ではないが頭数を数える 「24束か…」 そのまま箱を抱えて店の中へ入ると、店員さんが箱から出しながら手際よく数え始めた 「22束ですね」 「エッ!?あ、ハイ……」 不意に言われて、自分は生返事をしてしまったが、数の勘定間違えているんじゃないかなぁ? 自分が数えたときは24束だったんだけれど そうは言うものの、自分は箱から出してきちんと数えたわけでなく、頭数で勘定したので、たしかに24束だったかと言われると、自身が持てない 会計を待つお客さんが並んでいるところに、「もう一度数えた方が…」なんて水を差すようなことは、気が引けて言えなかったので、そのまま黙っていた しかしながら、自分のなかでは葛藤に似たモヤモヤとした感情が渦巻いていた “実際より少ない数で計算されているんだから儲けモンじゃないか” という悪の心と、 “間違っているのに、そのまま黙って見過ごすの?” という善の心とに挟まれて、待っている間なんとも居心地が悪かった 「間違っていると思いますよ」 たったその一言がなぜ言えなかったのだろうか? よく買い付けにいくところであれば、気さくに声を掛けることはできるのだろうが、今日のところは殆どといっていいほど利用しないところ 自分が間違いを指摘したところで、その店員さんの仕事振りを否定することになりはしないだろうか? ひょっとしたら気ィ悪くするかもしれない それに、自分が数え間違えている場合もあるし… と、色々なことを考えすぎてしまうところが自分にはあるので、あれこれ考えているうちにタイミングを逃してしまい、それなら黙っていたほうが無難だろうと思ってしまうのである 結局、その選択肢を選んだところでも、自分の胸の内ではモヤモヤとしたものが残るわけだから、それが最善の選択だとは決して思っていないのだが… 店員さんは手早く、5束ずつ新聞紙に包んでいく 当然5で割り切れる数ではないのだから、余った束数で正確な数に気づくはず しかしながら、全てを包み終えても数の訂正がされるわけでなく、 「大変お待たせしましたァ!!」 なんて、ハリのある威勢の良い声で見送りを受けるのであった もしかしたら、数は22束だったのかもしれない 数が間違っていたら、相手も商売なんだから黙ってはいないだろう 24束だなんて、自分の方が数え間違えていたんだね、きっと 自分、算数大の苦手だから… 何も口出ししなくてヨカッタァ 危うく、自分が恥かくところだったよ… 市場から戻ってくると、早速仕入れたものの下処理に取り掛かる まずは、気がかりだったものに手を伸ばした 新聞紙に包まれた束を取り出していく 5束ずつ包まれたものが、1つ、2つ、3つ、4つ 22束ということは、残る新聞紙の中に包まれているのは2束だけの筈 新聞紙を解くと… そこには4束が包まれていた ということは、24束… やはり、自分がはじめに勘定した数だった う~ん… これは一体どういう事? 念のため伝票を見たが、やはり22束で計算されている 謎だ… 謎すぎる… 今となっては、その真相を知る由はない すべては、それぞれの沈黙の中にあるのだから… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年03月10日 18時42分59秒
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