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カテゴリ:思
目覚まし時計が鳴った
反射的に瞼を開ける 目は覚めているものの、寝たりないせいか、頭の中はまだ夢の中にいるようにボーっとしている 目を覚ます意味でも、浴室に向かい湯船に浸かる あぁ~いい気持ち…… で、気づくと湯船に浸かったまま眠っていた そんな日々が最近続いているので、万が一湯船に浸かったまま眠り込んでも、寝過ごすことがないように、浴室にも目覚まし時計を置いている う~ん、ここのところ忙しいから、疲れはなかなか取れないし、つねに眠気に襲われているような気がする 気だるい感じがする身体に鞭を入れて、身支度をすると、家を出た 車のハンドルを握ると、暗闇の街のなかを疾走する 車内では、お気に入りの音楽を聴いていた 信号が赤に変わったので、車を停めたときのこと スローテンポの曲調の音楽から、突然まるで地響きに似たような不気味な男の声が聞こえてきた ??? な、何だ!?今の声は… 問題の部分をかけなおしてみたが、変な声は入っていなかった 寝ぼけてたのかなぁ? すると、またしても、今さっき耳にした謎の声が聞こえた よぉく耳を傾けてみると、その声は音楽からではなく、外から聞こえているようだ パワーウィンドーを開け放つと、なんとも心地のよい夜の空気が頬に触れた こんなひっそりと寝静まった街のどこから、あの気持ち悪い声が聞こえるのだろうか そう思ったときである 『ブヒィィィィィ!!』 ぶ、豚ァ!?!?!?!? その声の主は間違いなく豚だった しかもその数たるや、鳴き声からして1頭や2頭ではなさそう ここら辺に養豚場はないし何故だろう?と、辺りをキョロキョロしていると、自分の隣り車線に停まっている大型トラックから、ブヒブヒ聞こえてくるではないか 荷台の囲いが高くて窺い知ることはできないが、間違いなく、あの中にたくさんの豚がいるに違いない そういえば、ここから車で走ること数分のところに、食肉市場がある ということはだ、荷台に乗せられている豚たちは、そこに出荷されるということか はたして、これから待ち受けている運命を、車に揺られている豚たちは知っているのだろうか? 鳴き声は、一体何を自分に訴えようとしているのだろう ドライブを楽しんで賑わっているだけか 助けを訴える悲痛な叫びか 腹をくくって覚悟を決めた悲壮の絶唱か 残念ながら、自分には豚の気持ちを計り知ることはできない 信号が青に変わった 豚の鳴き声を背に、車をスタートさせる バックミラーを見ると、豚を乗せた大型トラックは、食肉市場がある方角へと向かっていった するとだ、自分の目から涙が溢れてきた 1粒、2粒と、涙が頬を伝っていく どうしたことだろう 何が悲しくて涙が溢れるんだ? 豚が市場に売られていくことが悲しいのか? ウン、悲しいよ 豚のために涙するだなんて、疲れが溜まっていて、ちょっと情緒が不安定になっているのかもしれない とはいえ、普段はそんなことおくびにも見せないが、こうしてみると、人が生きていくうえでは様々なものが犠牲になっているのだと痛感した 自分も肉や魚といった生物は口にするから、そんな奇麗事を言っていたら生きていけないことは重々承知しているが、せめて頂くときは“いただきます”と唱え、感謝という気持ちを忘れないで食したい それが人間が生きていくうえで犠牲となったモノたちへのせめてもの敬意だと思う こうして文章を書いている今、夜明け前に出会ったあの豚たちの命は、もうこの世にはないのだろう 『ブヒィィィ!!』 あの時聞いた鳴き声は、今でも耳に残っている…… 【悲壮】 悲しい中にも雄々しく立派なところがあること (辞書調べ) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年03月21日 12時52分26秒
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