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カテゴリ:哀
人間生きていると、様々な感情に襲われる
普段は穏やかに生活している自分だが、今日は喜怒哀楽に塗れた、なんとも感情の起伏が激しい一日だった 笑って、怒って、喜んで、悲しんで… 1日のうちに、色々な感情が目まぐるしく入れ替わり立ち代わり、自分のなかで湧き上がった そのなかで、一番身に堪えたのは、或る人との別れだった… その別れは、なんの前触れもなく、今日唐突に訪れた 本人の口からその別れを告げられたとき、自分のなかでは、“ついにこの日が来たか…”と、覚悟と否定したい気持ちとの相反する感情が、渦潮のように身体のなかで渦巻いていた そんな告白に対し、自分は、 「そうなんだ…」 と、ぶっきら棒のセリフしか出てこなかった もっと他に言いたいことがあるのに、掛けてあげたい言葉があるのに、自分のなかでブレーキが掛かっていて、素直な気持ちの言葉が口から出てこない ふたりの視線と視線が絡み合う 「………」 しばしの沈黙 相手は、何か言いたげそうな愁いな表情を浮かべている 自分の優しい言葉を待っているのだろうか? いや、それは自分の瞳にそう映っているだけで、自分勝手な独りよがりの想いなのかもしれない しかしながら、自分の眼には、相手が、自分の言葉を待っているように思えて仕方なかった それでも自分は何も言えだせなかった 静かに、その別れを受け止め、自分の想いを胸の奥深くに仕舞いこんだ 結局、自分でも自分がわからないまま、何を強がっているのか、 別れなんか悲しくないやいッ! と、最後の最後まで突っ張ってしまった あの人の去り際の後姿が、なんだか悲しみ色に染まっているように見えた もし、あの人が振り返ったら… いや、それでも自分は何も言えないだろうな 自分はただ、見えなくなるまで、その人の後姿を見続けるのであった… 感情を引きずったまま悲しみに包まれて、自分は街を歩いていた いつもは真正面を向いて歩いているが、今日ばかりは、気持ちが沈んでいるせいか、自然と視線は下を向いてしまう 秋空の下、トボトボと歩いていると、ふと甘い香りが鼻先をかすめた それは、キンモクセイの香りだった 視線を上げると、横の街路樹に、オレンジ色をしたキンモクセイの花が咲いていた “もうそんな季節なんだ…” その甘い香りは、沈みきっていた自分を優しく労わってくれて、すごく救われたような気がするのであった あなたのことは忘れません いや、忘れられるわけがないか 瞼を閉じると、はにかんだときの可愛らしい笑顔が鮮明に蘇ってくる キンモクセイの香りに誘われて、甘い記憶に溺れる自分 しずかに、ゆったりと、秋は深まりを始めようとしていた… 【会って、知って、愛して、そして別れていくのが幾多の人間の悲しい物語である】 (イギリスのロマン派詩人・コールリッジの言葉より) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年10月11日 11時42分35秒
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