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カテゴリ:瞳
現在、パルコ劇場にて公演中の舞台『ストーン夫人のローマの春』
先日観劇したのだが、観終わった後のなんともいえない胸を締め付けるような感情を、もう一度味わいたくて、二度目の観劇をすることにした しかも、今回は母と一緒 あまり外の空気を吸いたがらない母を連れ出す口実として、年に数回は親子で観劇を楽しんでいるのだ 自分は今日は仕事がある という事は、母とどこかで待ち合わせをしなければならない 劇場があるのは渋谷 帝国劇場や明治座といった、有名な大きな劇場なら劇場前で待ち合わせするのだが、パルコ劇場と言っても、もう渋谷は何十年も足を運んでいないという母では、うまく辿りつくことができないかもしれない 母は携帯電話を持っていないので、確実に会える待ち合わせをしなければならないのだ 「渋谷駅のハチ公前は?」 なんてベタな事を母は言っていたが、駅から出て、そのハチ公の像を母が見つけられるかどうかが不安 駅の改札口で待ち合わせといっても、沢山あるし… で、結局は、自分の勤め先の最寄り駅まで来てもらうことにした 自宅からは乗り換え無しで行けるし、改札口も1つしかないので、これなら間違えようが無いだろう インターネットで電車の時刻を調べて、 「○時○分の電車に乗って!」 「各駅停車しか停まらないからね!」 と、釘をさしながら、ふと思った なんでオレは、ここまでオカンのこと心配するんだろ? いや、母はほんと出歩かない人だから、大丈夫なのか心配で仕方ないんだよね 母は、いくつになっても自分のことをあれこれ心配している 自分は自分で母のことをあれこれ心配している そんな心配性の親子です さてさて、あれだけ念を押しておいたせいか、きちんと約束の時間に母は改札口に現れ、無事に合流することができた そこから自分の車に乗って、渋谷へと向かう 空いていれば30分もかからない道のりなのだが、今日はやけに混んでいる 道路工事や帰宅ラッシュの時間帯と重なったこともあってか、渋滞に巻き込まれ、劇場ちかくの駐車場に車を滑り込ませたのは、開演10分前 なんとか間に合ったと思ったのも束の間、母はお手洗いに行きたいというし、母のペースに付き合うので、早く歩くこともできない 劇場のあるビルでエレベーターを待っている間に、タイムアウト! まぁちょっとの遅れは仕方ないか… と、9階にある劇場に到着すると、「間もなく開演します」とのこと どうやら、19時からの開演時間がちょっと遅れているようだ 「日頃の行いがいいからだわね」 なんて、母は言っていたけれど、どうかな? こうして、なんだか忙しなかったが、幕が上がるまえに無事に客席に着くことができたのであった 今日は、前から2列目という席での観劇なので、役者さんをガップリ齧りつき! もういくつあっても眼が足りない!ってぐらい、あっち見て、こっち見てと、キョロキョロ眼球を動かす あまりにも舞台から席が近いと、役者さんの表情ばかり眼で追ってしまうので、全体的に視野が狭まってしまう しかし、前回の観劇のときがだいぶ後ろの席で、その時に作品全体が醸し出す雰囲気を味わっていたので、今日は躊躇することなく役者さんの表情・仕草・演技にだけ視線を配った 今回の観劇で一番注目したのは、若い男という役を演じている鈴木信二氏 主役のカレン・ストーンを付け回す浮浪者で、一言もセリフがないのだが、この役者さんがすごく繊細な演技をしているのだ 遠くの席だと、その細やかな演技がわからなかっただけに、彼の演技ばかりに視線は釘付けになった 日々生きていくことにすら困るほどの貧しき暮らしに身を沈めながら、眼には絶望感と、まるで生きることに執着しているような力強さを秘めている その鋭い眼差しが、とても印象的だった 主演の麻実れい氏は、今日も美しかった このカレン・ストーンという役は麻実氏の為にあるのでは?と思うほど、すごくハマっている カーテンコールで、舞台上ですべてを出し切って、まるで燃え尽きたかのように恍惚の表情を浮かべて、客席に挨拶をする麻実氏の姿に役者魂を見たような気がした 同じ作品だというのに、見る場所によって、こうも作品の印象って変わるのだろうか ほろ苦い結末に、今回も胸をえぐられ、締め付けられた 重たいテーマなんだけれど、素敵な作品は、何度観てもいいな 内容が内容なだけに、一緒に観た母はこの世界感を理解できるのかどうか思ったのだが、物語というよりも、舞台という非日常的な空間をそれなりに楽しんだようだった お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年03月16日 06時30分28秒
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