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水の都とも言われる江戸の街は洪水対策に悩んできました。古くは徳川時代に、江戸湾に南下していた利根川の水を東へ向けて、銚子沖へ流す大工事を行いました。しかし、地勢的に利根川水域の水流はどうしても南下するので、江戸が東京になってからも隅田川から東側の地域は治水対策に苦労しています。
昭和34年の伊勢湾台風で名古屋が大きな水害を受けたことは、東京湾を直撃する台風も同様な被害を東京の下町にもたらすとの懸念を高めました。そのため、昭和40年代に下町の水害対策が急ピッチで進みました。 台風の怖さは雨と風だけではなく、台風の勢力圏内では気圧が低いので海面が異常に上昇することです。その結果、高潮被害が発生するのです。下町の河川は、豪雨による上流からの増水に加えて、東京湾の水位の上昇による海水の逆流に見舞われるのです。 その対策としては、水面上昇に備えて河川の護岸を高くかさ上げすることでした。本格的な堤防を築くには用地の買収と膨大な土木工事が必要です。そこで取りあえず突貫工事で、既存の低い護岸の外側に背の高いコンクリート防水壁を造ったのです。(写真1) 写真1 隅田川上流のカミソリ堤防 このコンクリート防水壁を俗称「カミソリ堤防」と言っており、昭和50年頃までに、この工事は完了しました。既存の低い堤防と新しいカミソリ堤防の間には、一応通路はありますが、その場所からは川の景色は全く見えません。街の人々は川から隔離された状況に置かれました。(写真2) 写真2 聖路加ガーデン前のカミソリ堤防と旧堤防の間の空間(スーパー堤防未完成部分) それでも薄いカミソリ堤防では、川が増水中に地震などで崩壊する恐れがあり、そうすると川の水はどっと内陸部に溢れてきます。周辺の住人は常時危険と隣り合わせの生活を強いられました。 そこで昭和55年頃から、カミソリ堤防の欠陥を是正すべく、スパー堤防の建設が始まりました。垂直に立った薄っぺらなコンクリート壁の代わりに、緩い傾斜の堤防、即ちスーパー堤防を築く工事です。このスーパー堤防が出来上がりますと、水害からの安全が確保されるだけでなく、川に親しめる空間が生まれます。(写真3、4) 写真3 聖路加ガーデン前の完成したスーパー堤防 写真4 南千住の汐入公園の完成したスーパー堤防 スーパー堤防を造るには、土手の敷地の入手と、土手の重圧に耐える地盤強化が必要です。スパー堤防はカミソリ堤防のように突貫工事というわけには行きません。それに敷地を買収するには莫大な資金が必要なので、土地所有者と共同使用する形の共同事業になります。 従って土地所有者が開発事業を行う機会を捉えてスーパー堤防を建設する方法をとらざるを得ないのです。市街地のスーパー堤防の建設は時間のかかる仕事です。それでも隅田川のスーパー堤防は、逐次整備されています。 近年、隅田川の両岸には綺麗なテラス遊歩道が整備されつつあります。これもテラスの背後地の土地所有者が開発事業を行うとなった時に、一緒にスーパー堤防を建設するための準備作業を兼ねているのです。 隅田川やその支流・派流の護岸が整備されると、都民が河川に親しめる環境が整います。土手に船着き場を設け、花火を土手に座って見ることができます。江戸時代に江戸の町民たちが親しんだ大川(隅田川)が戻ってくる日も近づいています。 「スーパー堤防」と言いますと、最近財源捻出のための無駄を排除するとして仕分けの対象になりました。何時になったら完成するのか分からない「スーパー堤防」をだらだら建設するのは国費の無駄使いだと批判されたと聞きます。 時間が掛かるのは土地の所有者との権利調整に手間取るからであって、また共同事業にすれば土地購入費も節約できるのであって、東京都の「スパー堤防」は着実に進んでいるのです。政治家の皆様も、どうか現場に足を運んで現実的な判断をして欲しいものです。 (以上) 人気ブログランキングに参加 人気ブログランキングに参加しています。応援をよろしくお願い致します。 人気ブログランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
スパー堤防なのかスーパー堤防なのか
(2022.01.27 23:52:34)
スパー堤防は間違いで、スーパー堤防が正しいです。
古い東京今昔物語をお読みになり、間違いを指摘して頂き、有り難うございます。訂正しておきます。 なお、スーパー堤防は俗称でして、国土交通省の正式名称は「高規格堤防」です。 (2022.01.28 12:09:15) |