産経A記者のデタラメ(2)
前エントリからの続きです。さて、産経の阿比留瑠比記者は菅前首相を執拗に攻撃していることでも有名。記者会見で退陣を迫るなど、彼のやっていることは報道ではなく政治活動です。最近でも、原発事故は菅前首相による人災だと大騒ぎしています。--政治部・阿比留瑠比 首相の責任 全容解明を2012.1.8 03:13 (1/3ページ)[土・日曜日に書く]菅前首相の勘違い たとえ隠したいと願っても、隠しきれるものではないのだろう。 東京電力福島第1原発事故に関する政府の事故調査・検証委員会が昨年12月にまとめた中間報告で、当時の首相官邸、とりわけ菅直人前首相自身のパニックと暴走が無用の混乱を招いていたことが改めて裏付けられた。 現場は過酷な条件の下、第1原発1号機のベント(排気)に半ば死を覚悟して取り組んでいた。ところが菅氏は東電側が「ベントをためらっている」と誤解し、いらだちを募らせた結果、東日本大震災翌日の3月12日早朝に急遽(きゅうきょ)、現地に乗り込んだ。 「首相の対応に多くの幹部を割く余裕はなく、自分一人で対応しようと決めた」 吉田昌郎所長(当時)は事故調にこう証言している。政府の現地対策本部長だった池田元久前経済産業副大臣も、菅氏の様子を東日本大震災発生後5日間を記録した覚書にこう書いている。 「初めから詰問調であった。『なぜベントをやらないのか』という趣旨だったと思う。怒鳴り声ばかり聞こえ、話の内容はそばにいてもよく分からなかった」 「『何のために俺がここに来たと思っているのか』と総理の怒声が聞こえた。これはまずい。一般作業員の前で言うとは」 当時、菅氏の周辺は盛んに「ベントの指示を出したのに東電がなかなかやらなかった」との情報を流していた。だが、その間の事情を知る官邸筋は明言する。 「それは大嘘だ。むしろ官邸側は東電に、『何事も指示なく勝手に進めるな』『官邸の了解なし に判断するな』と指示していた」 菅氏の無理な現地視察がベント作業の遅れにつながり、水素爆発が起きた可能性は否定できない。http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120108/plc12010803130003-n1.htm--この文章、中身は支離滅裂としか言い様がありませんね。-- 当時、菅氏の周辺は盛んに「ベントの指示を出したのに東電がなかなかやらなかった」との情報を流していた。だが、その間の事情を知る官邸筋は明言する。 「それは大嘘だ。むしろ官邸側は東電に、『何事も指示なく勝手に進めるな』『官邸の了解なしに判断するな』と指示していた」--だって、現場で『なぜベントをやらないのか』と菅さんは言ってたんでしょ。だったら『官邸の了解』はそこにあるってこと。それで直ぐにやらなかったなら、「ベントの指示を出したのに東電がなかなかやらなかった」というのは、全く正しいってこと。そもそも、東電が作った資料自体に、--『福島第一原子力発電所 被災直後の対応状況について』1:30頃 1号機及び2号機のベントの実施について,総理大臣,経済産業大臣, 原子力安全・保安院に申し入れ,了解を得る。http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110618l.pdf--首相は福島第一に着く6時間も前に、ベントの実施を了解しているとはっきり書いてある。まさに『たとえ隠したいと願っても、隠しきれるものではないのだろう』です。にもかかわらず何時間もベントするのにかかっていたのは、明らかに東電の責任でしょう。それを大嘘呼ばわりする方が大嘘吐きってことです。で、唐突に「菅氏の無理な現地視察がベント作業の遅れにつながり」なんて書いてますけど、何が「無理な現地視察」なのか、その根拠は何も書いていない。これでよく新聞記者だなんて言えるものです。たとえ首相が来たって、現場の所長は「首相の対応に多くの幹部を割く余裕はなく、自分一人で対応しようと決めた」んでしょ。だったら「ベント作業の遅れ」なんて起きるはずもない。それとも東電は所長が指示しないとベント作業の準備すらできないような集団だったんですかね。だとしたら、それも東電がお粗末だっただけのこと。首相がヘリでやって来たからベントできなかったなんて与太話もネットあたりでは流されていたようでしたけど、それは東電がベントをちゃんとできるという前提があって初めて言える話。上述の資料では、東電はベントをするにあたり、こんなことをやっていた。--・ 中央制御室では,アクシデントマネジメント(以下,「AM」)操作手順書を当直長席に出し,内容確認を実施。また,バルブチェックリストを用いて,ベントに必要な弁や,その位置の確認を開始。・ 発電所緊急時対策本部(以下,「発電所対策本部」)発電班は,AM操作手順書を見ながら,電源がない状況におけるベント操作手順の検討を開始する。・ 発電所対策本部復旧班は,余震が続く中,地震で入室禁止となった事務本館に,ベント操作に必要な S/C ベント弁(AO 弁)を手動で開けることが可能かどうか,弁の型式・構造を確認するために図面を取りに行くとともに,協力企業へも問い合わせを実施。図面を確認した結果,S/C ベント弁(AO 弁)小弁にハンドルがあり,手動で開けることが可能であることを確認し,中央制御室に連絡。--「確認を開始」「検討を開始」「図面を取りに行く」「協力企業へも問い合わせ」こんなことをやらなきゃならなかった者が、「首相が来たから」なんて言ったって、責任逃れにしか聞こえません。そして、9:04に始めたベントも、ようやく圧力の低下が確認できたのは14:30。そして圧力は下がったはずなのに何故か15:36には水素爆発。普通に考えれば、東電がベントの手順がわからず、ヘマをして爆発を引き起こしたってことでしょう。だいたい、菅前首相の訪問がベントに影響したと言えるくらい、東電がしっかりベントできる能力を持っていたのなら、その後、2号機、3号機と次々爆発することを防げたはずです。この自称記者さんは、そういう客観的な事実は全て無視し、ただ自分の妄想に依拠して気に入らない者を貶めて、カタルシスを得ているだけ。産経新聞というメディアすら、彼にとっては道具に過ぎないのであろうと私は思います。続きます。