ヒメナガカメムシの幼虫(終齢)
先月の終わりの頃、コスモスの白い花の上に何か3mm位の小さな虫が居るのを見付けた。一寸見たところでは、ゾウムシの1種の様に見えた。しかし、マクロレンズで覗いてみると、何と、カメムシの幼虫であった。中々綺麗な縞模様で、これまで見たことのない種類である。 早速、カメラを持って来て撮影を始めた。虫が小さいので、テレプラス×2を挟んでの超接写である。コスモスの花に居たヒメナガカメムシの幼虫体長は3.2mmと相当に小さい(写真クリックで拡大表示)(2010/11/27) 写真から計測すると、体長は3.2mm。御覧の様に白っぽい地で、頭部には暗褐色の細い縦縞が3対あり、胸部にも暗褐色の複雑な模様がある。腹部も地は白っぽく、その上に茶褐色の不規則な網目状の模様がある。 全体として、中々洒落た色模様の幼虫と言える。真横から見たヒメナガカメムシの幼虫腹側にも同じ様な模様がある(写真クリックで拡大表示)(2010/11/27) 翅芽(翅の原基)が発達しているので終齢幼虫である。しかし、何カメムシの幼虫かは分からない。全農教の「日本原色カメムシ図鑑」を引っ張り出し、その写真を1枚ずつ2回調べたが、似た幼虫は見付からなかった。 養賢堂の「図説 カメムシの卵と幼虫」も2回調べたが、やはり該当種はない。正面上から見た図.吻にチョビ髭が生えている(写真クリックで拡大表示)(2010/11/27) カメムシと言っても、色々な科がある。一体何科に属すのか? 科の検索をしようとしても、検索表は成虫を対象としているので、幼虫の検索は難しい。触角や脚の節数は幼虫と成虫で同じとは限らないし、検索キー(key)の中には翅の形態もある。幼虫には翅はまだ無いのだから、こうなるともうお手上げである。 しかし、よ~く顔を眺めると、どうもナガカメムシ科(Lygaeidae)かその辺りらしい。しかし、それ以上は分からない。コスモスの種子を目当てに来たと思われるので、コスモスの萎みつつある花と一緒に飼育箱(100円ショップのパンのケース)に入れて成虫になるのを待つことにした。斜め横から.胸部側面の模様が良く見える(写真クリックで拡大表示)(2010/11/27) 待つこと2週間、成虫になっていないか否か虫を探すと(虫が小さいので探すのが大変)、チャンと生きており、至って元気。一安心だが、まだ幼虫の儘である。ヒョッとするとこれは幼虫越冬する種なのかも知れない。とすると、来年まで待たなくてはならないが、そんなに長く待つつもりはない。結局、カメムシBBSに御伺いを立てることと相成った。 早速、kameotaku氏から御回答を得た。「ヒメナガカメムシの仲間(この辺の種は分類を再検討中とのことです)の幼虫に見えますが、如何でしょう?」とのこと。ヒメナガカメムシ!!、これならば此処らで最も普通で、キク科の花の上なんぞに幾らでも留まっている、全く面白味のないカメムシである。この綺麗な縞模様の幼虫があの味気ないヒメナガカメムシに変態するとは!!、些か信じ難い。 ヒメナガカメムシの幼虫ならば、カメムシ図鑑に出ている可能性が大である。早速調べてみると・・・、やはりあった。写真が小さいのと色が黒っぽいので、見逃してしまったのである。天眼鏡で写真を拡大してみると、色は全体にかなり黒いが、基本的に同じ模様をしていた。どうも、コムピュータ用の老眼鏡では、図鑑を見るには度が少し低すぎる様である。同じ様な写真をもう1枚.付節は3節の様に見える(写真クリックで拡大表示)(2010/11/27) ヒメナガカメムシの幼虫ならば、Web上にも沢山あるだろう。「"ヒメナガカメムシ" 幼虫」で検索してみると、やはり沢山出て来た。特に、種類が分からない時に屡々お世話になる「カメムシも面白い!!」にもチャンと載っていたのには参った。完全に調べ方が足りなかった、と反省することしきり。口吻を掃除中のヒメナガカメムシの幼虫(写真クリックで拡大表示)(2010/11/27) ヒメナガカメムシは成虫越冬だと思っていたので、その点について更にお伺いを立ててみた。早速、鶉氏から御回答があり、「冬でも成虫と幼虫が混じって地表に見られたので、越冬態は成虫のみではないようです」とのこと。調べてみると、ヒメナガカメムシの仲間(Nysius属)は南方系の様で、越冬態と云うのが明確でないのかも知れない。とすると、今飼育中の幼虫、このまま越冬する可能性が大である。 中々綺麗だし動きも可愛い幼虫なのでどんな成虫になるか楽しみにしていたのだが、ヒメナガと聞いて飼育を続ける気持ちはすっかり無くなってしまった。丁度、一昨日、ベランダのキク科植物に同じヒメナガカメムシの幼虫を見つけたので、其処に逃がしてやった。掃除の合間.口吻が良く見える(写真クリックで拡大表示)(2010/11/27) 尚、kameotaku氏のコメントに「この辺りの種は分類を再検討中とのことです」とある。「検討中」と云う話は以前にも何回か聞いたことがあり、カメムシ図鑑にも「Nysius属には近似種が多く、その分類は本種を含めて全面的に再検討する必要がある」と書かれている。将来的に、ヒメナガカメムシ(Nysius plebeius、同図鑑に拠れば、種名をplebejusと綴るのは誤りとのこと)が数種に分かれる可能性もあるが、此処では単に「ヒメナガカメムシの幼虫」としておいた。