生徒にも“MECE”を教えよう
MECEとは 「互いに重ならず、すべてを網羅する」こと。 MECEであれば、最大限の明晰さ・最小限の混乱・最大限の完璧さで 思考を構造化できる。 (mutually exclusive,collectively exhaustive) マネジメントを勉強していたときに、コンサルタントに興味を持った。できれば、教師を定年になったあとも、教育の分野でコンサルタントができないか・・・などと考えないでもない。 そんなときに、参考書としたのが次の2冊である。 ● 「世界最強の仕事術」 http://item.rakuten.co.jp/book/4137988/ ● 「世界最強の問題解決」 http://item.rakuten.co.jp/book/4137989/ これらの、いわゆるマッキンゼー本には、「とにかくMECE、MECE、MECE・・・」というフレーズが随所に登場する。この聞き慣れない「ミーシー」とは何かというと、上記のような意味らしい。 この問題解決の手法をふと思い出したのが、ある生徒のアンケートである。学校祭の時期や、課題研究の季節ともなると、生徒の“あやしげ”なアンケートに協力させられる。一番気になるのが、選択肢の作り方だ。まるで網羅していない。ほとんど重複している。複数の観点を同時に尋ねている。とにかく何でもありになっている・・・ そこで、年に1回は次のような問題を出すことにしている。 問: 6年1組の最後の授業で、先生がこう言った。 「このプリントが終わった人から、下校していいよ。」 すると、プリントも終わらないのに、生徒は全員帰ってしまった。 この先生は、どう指示すべきだったのか、答えなさい。 解説:論理的に構成し直すと、次の4つのパターンが考えられる。 1.プリントが終わったら、帰宅する。 2.プリントが終わったら、帰宅しない。 3.プリントが終わらなかったら、帰宅する。 4.プリントが終わらなかったら、帰宅しない。 この先生は、1.について許可しただけで、2~4に関して何も指示していない。つまり、1.はルールとして提示しながら、2~4はルールになり得ていない。だから、2~4のどの行為を行っても、ルール違反とはならないのである。 この先生が、次のように言ったとしたらどうだっただろう。 「全員、このプリントを終わらせなさい。終わった人だけ帰っていいよ。」 この発言にも「漏れ」がある。「帰っていいよ」とは、帰宅する行為を「認証」しますよという意味である。つまり、帰りたくなかったら帰らなくてもいいわけです。もし、この先生がプリントを終えてから、速やかに下校させたければ、次のように言わなければならなかったのである。 「君たちは、全員、このプリントを終わらせなければなりません。 プリントが終わった人は、すぐに下校しなければなりません。」 これがめんどくさい、と思っていては、数学もできないし、外国で商売もできない。全く自分に好意も理解もない相手とコミュニケーションをとろうと思ったときの最大の武器は、誠実な態度と、論理的な思考力である。 このような論理の一般演習はさておいて、枝葉ばかりの演習を繰り返していても、賢くならないのは当然といえば当然である。できれば、この類題をストックして、「知の技法」的なワークブックがつくれないものかと・・・・思いにふける今日この頃である。