民法債権編の改定作業
民法債権編(全部)及び総則編(一部)の改定問題は、今年9月に、法制審議会に諮問されることとなりました。法案の提出は、早くても2012年(平成24年)の通常国会ということですから、司法書士試験等各種試験への影響は、それ以降ということになりそうです。どうやら、たたき台は、民法(債権法)改正委員会の案になるのかなという感じですが、今回は、学者だけではなく、弁護士等も参加のようです。なお、学者さんは、自らを「改正」委員会といっていますが、これは、「改定」というのが本当のところでしょう。ある法案が「正しいかどうか」は、法律を施行した後に決まることであり、自らの案を「正しい」とするかのような学者さんの態度は、謙虚なものとはいえません。ぼくは、「学問の基本」は、「事実と評価」を分けることだと思いますが、事実(民法を変えること)と評価(その変化は正しい)をごちゃまぜにしているレベルの人たちに、本当に実のある改定作業ができるのか、疑問に思っています。壊れていないものを直すようなことはしないでほしいというのが、実感です。今回の案は、EU諸国の改定作業の流れなのですが、EUでは、欧州連合の趣旨から、加盟国の民法を統一的にする必要があって、作業がすすめられています。しかし、日本には、その必要はなく、日本とEUの貿易よりもアジア諸国のそれとのほうが、現在も未来もずっと重要になります。となれば、アジアを見て作業をすればよいと思いますが、学者さんのヨーロッパ好きというのは、明治以来の伝統でありまして、あの業界は、ヨーロッパ中心であり、今回の改定案もヨーロッパの流れなのです。このように「改定の方向性」「必要性」という肝心な部分があいまいなまま、作業がどんどん進むのが、こういう場合の日本国の常であって、一言でいえば「権威主義」ということになりましょうか。朝日新聞民法債権法改正検討委員会