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カテゴリ:本 映画・絵・・・芸術
図書館から『一葉日記』のCDを借りた。 一昔前、 文学作品の収められているカセットを借りだしては 台所仕事をしながら聞いたものだ。 一葉の作品は、それこそ繰り返し繰り返し聞いた。
さて、今回借りた『一葉日記』、 これまで読んだことがなかったので、とても新鮮。 半井桃水とのやりとり、 生活ために小間物屋を開く経緯、 「たけくらべ」が認められた時の文壇の様子など 興味深い。
苦しい家計を補うための借金の話は聞いていたけれど、 日記に綴られた実情は聞きしに勝るもの。 質屋はもとより、 友人知人からもかなり頻繁に用立てもらっている。 それも、けっこう上手に! 一葉の暮らしがそのまま小説であるかのようだ。 作品が認められ、これからという時にはすでに結核におかされ 24歳という若さでこの世を去らねばならなかった。 もっと長生きしていたらどんな作品を残したことか。
しかし、類まれな才能が開花したのも、 二十歳前にしてすでに戸主であったという家庭の事情と、 筆一本で一家を養おうという覚悟があったればこそとも思う。
作品が世に出た時、 清少納言、紫式部と並び称された一葉である。 だが、平安時代の宮中で暮らしたふたりと一葉では、 生活の土台が全く異なる。 「にごりえ」に描かれる場末の酌婦に読む者が心動かされるのも、 借金に奔走しなければならなかった一葉であったからだと改めて思う。
家計のやりくりをし、 実質的に一家を支える働きをしている女性は、 今も昔もたくさんいる。 でも、世の中が家制度で動いていた時代、 女戸主に求められたものは、 今の私たちの想像を超えるものであったにちがいない。 いまや5千円札になった一葉さん、 本人が知ったらなんと思うかしら。
鏑木清方の描いた、 背筋をシャント伸ばした一葉がますます好きになった。 一葉の気概にあやかって、 明日からまた気持ちを新たに(^J^) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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