~S800C編その4
私がS800Cを購入したのは’93年12月初めの事。住んでいる北陸地方はいわゆる雪国(最近はそれ程でもないけど。)で、バイクや趣味グルマは積雪と共に冬眠しなければならない地域である。私は早く乗り慣れたい(少なくともスマートに乗りこなしたい)という思いから、仕事が終わると毎日のようにSの座席に座り、「今日は一発で(セルが)回ってくれますように・・」とお祈りしドキドキしながらキーを捻る習慣となっていた。 そういう理由もありしばらくの間は仲間内にS購入の事は黙っていようと決めていた訳だが、12月も下旬になった今にも雪が降り出しそうなある日、何処で聞きつけたのかバイク仲間の一人がやってきた。「yamasada、エスハチ買ったんだって~っ!?オレも乗っけてくれ!」「しょうがねーな~」と言いつつも実はまんざらでもない私。 となりにそいつを乗せ、肌寒い夕暮れ時、軽快(?)に近くの峠に向かって走り始めた。当時の我がS、万全の状態ではないはず(相変わらずシフトノブ振れによる騒音は大きいし・・)だったが、うねうねの峠登り道ではS本来の片鱗は垣間見せた。「お~っ、エスハチってすげーな!車高も低いし、視界もほとんどカート並やっ!!しかもほとんどロールしてないんじゃねーの!?」といわれ、さらに気をよくした私は、比較的勾配のゆるい直線でフルスロットル!・・・しかし、7千回転がいいトコだった。「『GTロマン』では1万回転まわるシーン描いてあったけどなぁ・・・」などと思っているのもつかの間、峠頂上付近トンネル内で・・・。「おいっ、yamasada、何か焦げ臭くねーか?」「え?・・・!!」 うおっ!!ボンネット隙間から白い煙がモウモウと立ち始めた!「A(友人仮名)・・ど、どうしよ??」「トンネル抜けたら下りやし、下りたとこの自販機のところで一度クルマ止めようっ!」「お、おうっ・・」 空はすっかり暗く、言われた自販機に何とか辿り着くとその照明の前で、恐る恐るボンネットを開けてみた。あいかわらず煙は立ち上っている。その煙の元は・・・。 二人で顔を見合わせるが、答えは出ない。二人ともメカの知識がないからだ・・・。「何かの線だな・・・。」「ああ・・、ナンかの線だ・・。」 その線はまだ煙を上げ、薄暗くなった周囲に反し真っ赤に熱せられている。{それはエンジン&ボディ&バッテリー-端子間を結ぶアース線だった。本来、S純正のアース線はビニール皮膜で二股状になった結構太い線であるのだが、当時私のSに付いていたモノはメッシュ裸線、しかも容量不足の上に腐食していた。〔※これが不具合1の原因だったとも思われる。〕} でも、当時の私達には何事が起こったのか知るよしもない。「ど、どうする?やっぱJAF呼ぼうか?」と私。「冷めたら帰ればいいんじゃねぇ?この山道、トンネルまで戻れれば後はずーっと下りやし・・・。」とお気楽なA。「そ・・そだね。」 友人が一緒にいることがこんなに頼もしく思えた事はない。 Sがウチに来て、2週間が過ぎた時の出来事だった・・・。