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黄葉して落葉する銀杏の葉を、「金色の ちひさき鳥のかたちして 銀杏ちるなり 夕日の丘に」と鳥の姿に擬えたのは与謝野晶子である。(恋衣収載) 晶子にもイチョウの葉が散る様子は、決して鳥の姿に見えたわけではないであろう。 舞い落ちる葉を蝶に見立てるよりも、鳥の方がずっと詩情がある。 イチョウは漢字で銀杏・公孫樹と書き表わされるが、葉が鴨の足に似ているところから鴨脚樹とも書く。 イチョウの語源については定かでないが、中国で鴨脚をイアチァオ(yājiǎo)と発音することに由来するのではという説がある。 また銀杏ギンナンという名の由来は、中国の植物図鑑「紹興本草(1159年)」などに記載された唐読みのギン・アンが語源ではないかとされている。 葉を見る限り幅広くて松や杉の葉のような形をしていないので、広葉樹にも見えるがむしろ針葉樹に近い不思議な樹である。 イチョウは日本の至る所に植栽されているが、生きている化石としてレッドリストの絶滅危惧種に指定されている。 雌雄異株の風媒花で、植物なのに精子を持つ樹木としても有名である。雄木が半径1km以内に存在すれば、受粉可能といわれる。 裸子植物なので、受粉様式は被子植物と異なる。授精した花粉は、雌花の胚珠端部の花粉室に数か月も保持される。 胚珠はその間に、直径約2cm程度に肥大する。受精によって胚珠は成熟を開始し、11月頃に種子は熟成する。 このころになると、果肉は軟化し臭気を発するようになる。この臭気の主成分は酪酸とヘプタン酸であり、この臭気はカルボン酸類に特有の臭いである。 銀杏の並木で有名なのは、東京明治神宮外苑・大阪御堂筋・横浜日吉駅前・渋谷区千駄ヶ谷付近・甲州街道八王子市追分町などである。 これらの並木の中には数本の割合で、雌木が混植されていることがある。比較的人や車の通りが多い場所では、落下した実が踏み潰されて異様な臭気の素となる。 クルミなどを好んで食べるネズミは、ギンナンを食用にしないがアライグマは食べる。 イチョウの葉について昔から医薬効果があるとの説がありその検証が、国内外で広く行われている。 一部には「イチョウ葉だけに含まれるテルペンラクトン類は、血液のスムーズな流れをサポートするなどさまざまなパワーを持つといわれています。」とあり、脳血管性認知症の予防と改善・加齢による記憶力、認知力の改善・末梢血管障害の改善・高血圧の調整・冷え症の改善・精神の安定・抗酸化作用・更年期障害の軽減・耳鳴り・めまいの改善に有効」とされるが現在のところ薬効については医学的に実証はされていない。 ドイツではイチョウの成分が医薬品と認められているが、日本ではイチョウ葉は医薬品として認可されていない。 むしろ生の葉は、摂取すべきでないとの説がある。 雑誌などでイチョウ葉を用いた健康茶の作り方を紹介していることがあるが、こうして作ったお茶には多量のギンコール酸が含まれるとされるので勧められないとしている。 (国立健康・栄養研究所) ギンナンによる中毒も報告されており、特に10歳未満の小児では5~6個程度でも中毒を発症したとする記録がある。 中毒発症のメカニズムは、ビタミンB6との関係があるといわれている。 籠城の際の糧食にするため、清正が城内に多くのイチョウの樹を植えたとされている。そのため熊本城は、別名を銀杏城といわれる。 ただ多くの武士の食料にするほどのギンナンが採れるのか、それほど大量に食べて中毒の心配がなかったのか首を傾げるところではある。 今年は秋の季節が無いまま、すでに山野の木々は冬に向かう準備を始めた。たの木々に先駆けて街路樹のイチョウの木が、黄色に変化してきた。 昭島市にある昭和記念公園の噴水の両側に植えられた、百本以上のイチョウも例外ではない。 ただ多くのイチョウの名所と異なるのは、イチョウの木の四割近くが雌木であることである。 ギンナンの形には、丸いのと稜のある実の二通りある。一説には稜のある実が雌だというが、必ずしもそうではなさそうである。 人為的操作をしなければ確率からいえばギンナンを植えて雌雄になる確率は50パーセントだろうから、この公園では人為的な選別がされなかったのであろう。 今年の多雨日照不足が影響したのか、ほぼ一本置きの木に小さなギンナンがぎっしり稔り既に落下した果実からは独特の臭いが立っている。 公園内での草木果実の採取は禁じられているが、人目につかない場所では高齢の女性集団が手に持ったビニール袋に山盛りにギンナンを拾い集めている。 こんな小粒な実では、鬼皮・渋皮をむくのに手間ばかりかかりそうである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年11月01日 11時41分33秒
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