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「 覚 堀川町 一御当地袋町生 御商人 利三郎 一同紙屋町生 同 女房 一同平田屋町生 同忰 幸蔵 合三人 一真宗広寂寺旦那ニて御座候 一請人堺町四町目家持たはこ屋松次郎 右は只今迄平田屋町すミ屋忠兵衛借屋ニ居申候所、此度勝手ニ付、私借屋借り請参申度由申候ニ付、生所万事相しらへ申候処、別条無御座、慥成者ニて御座候間、借屋貸し申度奉願候、此段宜様被仰上可被下候、以上 寅四月朔日 鍋屋源兵衛 年寄久賀屋六右衛門殿 」(天明二年(1782)「堀川町覚書」) この文書(送り証文)は、家主鍋屋源兵衛が年寄(町役人)宛てに出したものです。 商人利三郎の家族は、今までは平田屋町すミ屋忠兵衛借屋にいましたが、この度勝手につき、私の借屋を借り受けたいと申しています。生所・旦那寺など調べ、請人もたてており、確かな者ですので、借屋を貸したいと考えています。よろしく手続をお願いします。 「此度勝手ニ付」の文言を調べてみました。 【勝手】(『広辞苑』) (1)都合。便利。(2)都合のよいこと。便宜のよいこと。便利なこと。(3)自分だけに都合のよいように行うこと。わがまま。きまま。(4)台所。くりや。(5)生計。家計。くらしむき。(6)建物の中や場所などのありさま。ものごとの様子。模様。ぐあい。(7)弓を射るとき、弦を引っ張る方の手。引手。 当てはまる意味は、「都合」「便利」「わがまま」ぐらいですが、願書に「私の我儘の為」とは書かないでしょう。「便利が良いので」と書くのも変です。便不便は役人にとってはどうでもいいことだからです。残るのは(1)の「都合」です。現在の「都合により……」という言回しに相当するのだろうと思います。 この言葉も、考えてみると“変な言葉”ですが、“便利な言葉”です。「都合により、今日は欠勤します」と聞いても、その具体的な理由は分りません。「どちらへ?」「ちょっとそこまで」「いってらっしゃい」の「そこまで」と同じ、それ以上は追求できません。 同類の文書では、たいてい「此度勝手ニ付」と書いてありますが、「為勝手」とするときもあります。 「唯今迄当村与兵衛儀借家ニ居申候処、為勝手今度其村長右衛門貸し家へ参度旨願出申候」(『古文書雑話』) 今まで当村の与兵衛の借家にいましたが、勝手の為、今度そちらの村の長右衛門の貸家へ参りたいと願い出ました。 「勝手」の意味は多岐にわたるので、外にも面白い使い方があります。たとえば「不勝手」、 「不勝手之面々ハ随分布木綿着用可有之事」(「鶴亭日記」) (家中で)不勝手の者共は、いうまでもなく布木綿を着用すべきである。 【不勝手】(『広辞苑』) (特に武家方で) 生計の困難なこと。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006/11/02 06:33:23 AM
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