御座りやした
『浪花雑誌 街能噂 春』(街の噂 春)の板本(国立国会図書館デジタルコレクション)に、右図のような記事があります。「四角(しかく)な帯(おび)を〆(しめ)て至(いた)ツてお人(ひと)がらな形(なり)で▢(ござ)りやした。」(図参照)漢字には、全てルビが付いているので読みやすいのですが、文末の「▢りやした。」で▢に当てはまる漢字がわかりません。「ござ」の読みに相当する字ですから合字と思われます。ごうじ【合字】(『広辞苑』)2字以上の文字を合せてできた文字。「麿(麻呂)」「杢(木工)」など。色々と調べましたが、わかりません。御存知の方、ご教授願います。この記事について、前田元治さんから早速、明快なお答をいただきました。ありがとうございました。「カタカナの「ム」に似ている「厶」という字だと思います。形は似ていますが、文字コードは違います。IME辞書の場合、「ござ」と書き込み、変換すると「厶」が表示されます。glyphwikiによると、カタカナの「ム」とは異体字だそうです。余談ですが、石川啄木が「ござ」の「厶」を使っているそうです(ふりがな文庫)。」このブログの(2020/07/16)の記事、『「間ノ払ヒ」と「厶」』に、次の引用がありました。再掲します。【厶】厶部 0画 総画数 2画 第2水準 区点=5051 16進=5253 シフトJIS=99D1 Unicode=53B6《音読み》シ(平)支(脂)《ピンイン》(s)♪《訓読み》わたくし, ござる《意味》{名詞・形容詞}わたくし。個人的なこと。わたくしごと。わたくしごとである。《同義語》⇒私。《対語》⇒公。 《日本語での特別な意味》ござる。…であります。「左様で厶る」 《解字》厶 指事。三つの意味が厶の形であらわされる。Aは、三方から囲んだ姿を示す。私の原字で、細かくわけて自分の分だけ囲いこむこと。細と同系のことば。「説文解字」に「自ら営(カコ)むを厶(シ)となし、厶に背く(その反対になる)を公となす」とある。Bは、曲がった枝でつくったすきの形で、耜(すき)の原字。Cは、ひじを曲げた姿で、肱(コウ)(ひじ)の原字。