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言葉を“面白狩る”

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2006/11/09
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カテゴリ:カテゴリ未分類

「近来ハ母老年、殊ニ血証ニて、手足身体疼痛御座候て、自由相遂ヒ難、折々浴湯仕候得は快気ヲ覚候故、居風呂ヲ好ミ申候、依之遠近ヲ不択、風呂焚候家御座候得は、自身負行入湯為致」(文政九年(1826)「鶴亭日記」)
近頃は母親も年を取り、殊に血証のため手足身体が痛んで自由にならず、時々浴湯すると気分が良くなるので居風呂を好んだ。そこで遠近に関わらず、風呂を焚いた家があれば、(亀蔵は)自分で背負って行き入湯させた。

これは、亀蔵が継母に孝養を尽す様子を割庄屋に報告する文書です。母は居風呂を好み、「貰い湯」をしたことが書かれています。亀蔵の家に風呂があったとしても、「貰い湯」をしたはずです。

据風呂・居風呂】すえふろ。(『国語大辞典』)
大きな桶の下にかまどを作りつけて、湯をわかし入浴するのに用いるもの。すいふろ。(図参照)


私の興味は、この風呂は移動できるのかどうかにあります。『広辞苑』は「据える」を「一ヵ所に定めて動かさないようにする」と説明しますが、“動かそうと思えば動かすこともできる”という意味も含むのではと考えるからです。

「損料之定メ
夜着 弐分宛
ふとん 壱分五厘宛
……
居風呂 三分宛
右之通、借用仕候宿屋中より差出候事、尤、損し出来候ハヽ借り主より繕差戻し候事」(明和九年(1772)「諸大名衆東町御休泊条目之定」)

居風呂は三分、借用した宿屋より借用料を持主に払うこと、壊れたら借り主が元通りにして返すこと。

大名が三原宿に泊るとき、宿屋は布団や居風呂を借りて、借用料を支払っています。すると、居風呂は動かせるようです。どうも図のイメージと違います。

「如何なる故か大橋家(大橋経登)にて据風呂を屋外の庭に出して之を焚き、交る々々浴し居たる所、天俄に陰りて急雨を下しければ、浴者風呂を出で雨を避けんとすると同時に経登突然として飛び来り、湯は風呂桶に満ち、人は其中に蹲り居るにも係はらず、両手を桶の左右に懸け、其侭挈げて屋内に入れたりといふ」(小鷹狩元凱「広島蒙求」)

これは「怪力を顕して万衆を驚したる奇談」として書かれたもので、その光景は想像するだけでも可笑しくなりますが、それは兎も角、この据風呂は移動可能です。もっとも、力持の男にかかれば、図のような風呂桶は動かせるでしょう。すると問題は、移動させて使ったかどうかになりますし、なぜ移動させる必要があるのかも気になります。

据風呂(前田勇『江戸語の辞典』)
「すいふろ」に同じ。持ち運んでどこへでも据える事が出来るのでいうとも、水風呂を居風呂とも書くので字によっていうともいい、確かでない。


色々と調べましたが、この説明の「確かでない」が、一番確かな様な気がしてきました。






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最終更新日  2006/11/09 06:32:17 AM



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