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一本の樹のはじまり
ほつといふ口のかたちに梅は咲き今年の春が肩に落ちてきた エアコンの無色の風に運ばれて岩波文庫のパラフィンの音 北風と太陽ならば目的はひとつであるが あなたは風だ 夕闇に吸はれる記憶ありつたけの画集開いてあなたを呼ばう 窓外は海であるのにこのロゼは中途半端な甘さであるよ きつちりと並ぶ苺を手に取れば別のパックがたちまち香る まだ硬き蕾のなかに遠景をひとつ隠してゐるチューリップ はいといふ全肯定に咲く花を恐れつつ雨の朝を待ちぬ どんぐりが芽をだしてをり一本の樹のはじまりはこんなに軽い 『眩』第六十四号 2005/5 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jun 3, 2005 09:43:17 PM
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