魚とダイオキシン 後編
7/10の続きです。一端発生してしまったダイオキシンは、自然界の中ではなかなか消滅しません。農薬や排気ガス、工場、焼却場などで発生したダイオキシンは、空気中に分散し、一部は雨とともに川へ流れ海に向かいます。また、土壌中に蓄積されたダイオキシンも徐々に流れ出し、結局は海に向かいます。分解消滅しないために、その行き着く先は海になるというわけです。海に溶け込んだダイオキシンは、プランクトンなどの微生物の体に取り込まれ、次にはそれをエサとする小型の魚へ、さらにはその小型の魚を食べる大型の魚へと、順次濃縮されて蓄積されていきます。そして最終的には、食物連鎖の頂点に立つ人間へと集積されていくわけです。ダイオキシン類を摂取してしまう原因の一番が魚貝類からというわけは、以上のことによるようです。人間が地球上にばら撒いたダイオキシンを、満遍なくかき集めて、ひとつ残らず人間に返してくれる、それが海と海の生物というわけです。それが自然のシステムということかもしれません。しかし考えてみると、このシステムは悪いことばかりではないことがわかります。つまり、人間にとって大事な栄養素も、海と海の生き物は満遍なくかき集めて、ひとつ残らず人間に与えてくれるということになるはずだからです。自然界を汚し自分たちの体を蝕ませるのも、自然界をきれいにして自分たちの体を健康に保つのも、結局は人間自身の責任というわけです。残念ながら最近では、東京湾のアナゴ、日本海のカニの内臓、地中海のマグロなど各地の海の魚介類から相当濃度のダイオキシン類が検出されているそうです。特にダイオキシンは脂肪に蓄積しやすいために、魚でも脂の部分にダイオキシン類が多く含まれます。東京湾のマガレイの脂分やサメの油から高濃度のダイオキシン類が検出されたというデータが集計されてもいるようです。いきなりですが、ここで、「食品と暮らしの安全基金」による魚のダイオキシン濃度ランキングの発表です。【ダイオキシン高濃度ワースト10】・スズキ・クロマグロ・コハダ・アナゴ・カジキ・タチウオ・キンメダイ・メバル・キハダマグロ・ブリ【ダイオキシン汚染度が低いベスト10】・ニベ・タカサゴ・トビウオ・スケトウダラ・マダラ・フグ・アカイカ・シロザケ・シラス・グチこれは別々に発表された、水産庁の調査結果と厚生労働省の調査結果を、「食品と暮らしの安全基金」が独自に比較検討した結果だそうです。大規模な調査ではなかったため、調査された個体数も少なく、海域も限定されているなどで、汚染の実態を正確に表しているとはいえないということです(なので、この名前の魚「すべて」が危険、あるいは安全ということにはならないようです)が、以下のような傾向は見てとれるとのことです。・沿岸ものより外洋ものが汚染度は低い(特に、東京湾や大阪湾のような湾内の魚は危険)。・国内産より外国産の方が汚染度は低い。・食物連鎖の上位にある大型魚よりも小型のものが汚染度は低い。・脂肪が少なく、寿命が短いものの方が汚染されていない。そのほかの点としては、・比較的大型でも、カツオやビンナガマグロはそれほど汚染度は高くない。・すり身の原料のスケトウダラや、高級かまぼこの原料のグチ、ニベの汚染度が低いので、かまぼこのダイオキシンも少ないといえる。・イカ類は脂肪が少なく、汚染の度合いも低いが、内臓の汚染度は高い。ちなみにこれが鶏などのエサに用いられたりするので、ダイオキシン濃度が高くなる卵もあるはずである。・サンマは寿命が1年ちょっとと短いので汚染度は低い。・マイワシは寿命が7~8年と長いので汚染度も高まるが、小さめのものを食べればリスクは小さくなる。そして結論として、「食品と暮らしの安全基金」おすすめの魚はというと―・イカ(身のみ)・サンマ・シロザケ・タラ・カツオ・(小さめの)イワシなどのようです。 サンマとサケは人類を救うかも?!「食品と暮らしの安全基金」推薦の産地直送魚介類。・産直グループ http://www.nnet.ne.jp/~santyoku/追伸。今盛んに、スーパーなどのレジ袋の有料化が叫ばれています。ゴミを出しすぎの日本ですから、これで少しでもゴミが減るのはいいことです。ちなみに、スーパーのレジ袋、おしぼり袋、ゴミ袋などに使用されているのはポリエチレンです。パンやお菓子の袋、クリーニングの袋などがポリプロピレン。このポリエチレンとポリプロピレンをあわせて「ポリオレフィン」と呼ぶそうです。このポリオレフィンは塩素系ではないので、燃やしてもダイオキシンは発生しないのだそうです。一方、昔から普通ビニールと呼んでいたものの元祖はポリ塩化ビニールです。こちらは、燃やすとダイオキシンが発生するといわれています(発生しないという意見もあります)。混同しがちですが、厳密には違うものだそうです。多くの人がスーパーのレジ袋などを、「ビニール袋」と呼びますが、正式には「ポリ袋」と呼ぶべきなのだそうです。ちなみに、ポリエチレンは炭素(C)と水素(H)からできています(C2H4)。そのためポリ袋は焼却しても水と炭酸ガスになります。塩化水素などの有害なガスを発生することがないため、燃焼してもダイオキシンが発生しないわけです。また、ポリ袋はリサイクル出来ます。加熱して別の形状に再加工が可能なのだそうです。身近なものでは黒いゴミ袋です。これは、工場で出るスクラップなどを再利用しているそうです。