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阪本ニュース

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2010.03.15
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カテゴリ:生き方
 

【SOCの育て方】

これら三つの感覚はSOC(Sense of Coherence)と呼ばれ、一般的にストレス対処能力を測る物差しとされていますが、簡単にいってしまえば、「きっとうまくいくに違いない」という情緒的余裕と経験に基づく楽観性ではないかと思います。

現在、私は宇宙飛行士の選抜にも関わっていますが、あのような密室で、かつ何かあったら生死に直結する状況に長時間滞在することは大変なストレスです。それに耐え得るには、論理的思考力だけでなく、SOCが高い人でなければ到底無理です。

一九七〇年、月面着陸を目的に打ち上げられたアポロー3号は途中で液化酸素タンクが爆発、絶体絶命の中で奇跡的な生還を遂げました。それはなぜか。いろいろと理由はありますが、私は船長であるジム・ラヴェルが非常にSOCの高い人物だったからだと考えています。論理的思考力の高い宇宙飛行士たちや優秀なNASAの職員たちがどうシミュレーションしても帰還は不可能といって嘆く中、ジム・ラヴェルは「そうは言っても何と

かなるかもしれないじゃないか」と船員たちを鼓舞し、マイナスニ百度の中でヒーターの温度をギリギリまで下げて電力をセーブしました。そして大気圏へ突入し、地球へ戻ってきたのです。

これは宇宙飛行船という限られた空間の中の話ですが、昨今の厳しい経営環境にも置き換えられることであり、さしずめSOCはリーダーに欠かせない資質であるといえます。実際、私が精神科産業医としてお目にかかってきた素晴らしい経営者は、みな意識していなくとも論理的思考力ととともに、SOCの高い方ばかりです」。

では、このSOCを高めるにはどうしたらよいのでしょうか。

基本的に人間のSOCは幼少期の経験が大きく影響します。要するに愛されて、共感されながら育ったかどうか、ということです。ジム・ラヴェルも、親に大切に育てられ、非常に寛容な人でした。水泳教室を例に挙げましょう。子供が水泳教室で5メーター泳げるようになった。子供がちらっと保護者席を見た時に、お母さんが手を叩いて喜んでくれる。そして家に帰って、「頑張って5メーター泳げたね」とそれまでの努力を認めた上で「今度10メーター泳げるようになったら、お母さんはすごく嬉しいな」と期待を込めて、次の目標を与える。

これを努力報酬型モデルといって、努力すれば必ずできるようになり、喜んでくれる人がいるという感覚を子供のうちに身につげることが非常に重要です。

また、母親に限らず、周りの人に助けられた経験も大切です。例えば家に帰ってきたら、お母さんがいるはずなのに、家にカギがかかって入れない。どうしよう、もう辺りも暗くなってきた。「わーん」と泣き叫んでいる時、隣のおばちゃんが現れて、「じゃ、ママが帰ってくるまでうちにいなよ」と言って助けてくれた。そういう経験があると、その後の人生で窮地に追い込まれた時、自分の人生はここで破綻することはない、というある種の楽観性を身につけることができます。

では、幼少期に恵まれず、SOCが低いまま大人になってしまったら、もう高めることはできないのでしょうか。残念ながら、人間としての幅広いSOCを高めることは難しいでしょう。しかし、「この仕事において」とか「この職場において」という、局地的なSOCを高めることは可能です。

そのために大切なのはやはり社員教育です。きちんと会社の理念を伝えていく中で、上司が先ほどの母親のように小さな成功に共感し、褒めた上で、次の目標を与えていく。この繰り返しによって、その環境にふさわしいSOCは高まっていくでしょう。

【ストレスから解き放たれた世界】

SOCを高めるには、他者の経験に学ぶということも一つの方法ではないかと思います。

例えば「なぜこんな仕事を自分がやらなければならないのか」と感じた時、「あの先輩も最初はそう感じた仕事が後になってすごく役に立ったとか言っていたな」と思えることで、気持ちの切り替えに繋がります。親族や先生、先輩、あるいはもっと昔の偉人の経験に学ぶのもよいでしょう。

私の場合、若い頃は夜の十二時くらいまで医局にいて、そこで雑談のように聞いた先輩の話が大変役に立ちました。

「マニュアルのこの部分、俺はこう工夫したんだ」「一~五まであるけど、五が一番気をつけないといけないんだよ」......。それは、座学で得た知識やマニュアルの文と文の行間を埋めるような情報であり、それが潤滑油となって、知識をうまく回していけたと私は実感しています。

いま流行りの「ナレッジ・マネジメント」でいえば、学校で教わることやマニュアルはハードナレッジであり、雑談のようなコミュニケーションで得る情報はソフトナレッジといえます。いまの企業の中で、このソフトナレッジを得る機会は非常に少なくなりました。決まった時間、決まった仕事しかしたくない。定時に仕事を切り上げ、カルチャースクールに通ったり、おしゃれなレストランで食事をしたい。上司や部下とは仕事だけの付き合いにとどめ、プライベートな時間にまで立ち入られたくない。会社側もまた、残業代を切り詰めるために、定時になったら即刻帰るよう促します。一見、それは効率よく見えますが、人ひとりの社員の経験知が次世代に伝承されていかないことは企業として大きな損失です。

また個人としても、自由な人生を謳歌しているように思えますが、そこにあるのは「私の行為に対して、このくらいの見返りを得るのが当たり前」「このくらいの見返り

ならば、私はこのくらいの働きで十分」というドライな「give and take」の世界のみ。その時、フォーカスを当てているのは自分だけであり、それが行き過ぎると、人間としてのバランスを失ってしまいます。

結局、うつ病など、精神的な病に苦しんでいる人は「自分はうつ病になってしまった。自分は弱い人間だ、ダメな人間だ......」と、自分にフォーカスを当てすぎて、周りが見えなくなっているのです。

それが治りかけて症状が上向いた頃、私はよく、「朝早く起きて、人知れず家の前の道賂を掃いてみましょう」と勧めます。どんな小さなことでもいいので、人知れず見返りを求めない無償の行為をする。それによって、いったん自信を失って自身の存在意義にさえ疑問を持ち始めた人も、周囲の存在を感じるだけの余裕が生まれ、人間としてのバランスを取り戻すことができます。

人はみな天から命と才を賜って生まれてきます。もともとが賜ったものであるなら、それを無駄遣いせず、私物化もせず、世の中に還していくことが、もっともその人を輝かせる道ではないかと感じます。

私自身、精神科医として様々な評価を得ることも嬉しいことは嬉しいですが、やはり病んだ患者さんが立ち直って、新しい人生を歩み出すことに何よりの感動を覚えます。また、「いのちの電話」のボランティアを長年続けていますが、これもまた非常に清々しい喜びを得るのです。

決して大きなことでなくてもいいのです。一時間早く出社して会社の掃除をする。あるいは自分の仕事が早く終わっても、隣の人が忙しそうなら、手伝ってあげるのもいいでしょう。家族のため、地域社会のためでもいいと思います。

自分の命と才を人知れず、そして見返りを求めずに自分以外の誰かのために使う。その無償の世界に触れた時、心さな自我にとらわれたストレスの世界から解き放たれ、人間の命は光り輝くと思っています。






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最終更新日  2010.03.15 01:43:07
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