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カテゴリ:雑考あれこれ
昨日は、「虚像の砦」を読んでいて、遅くなってしまいました。
真山仁という作家は、「ハゲタカ」で一躍有名になった人。かなり遅まきながら、ハゲタカを読んで、非常に面白かったので、TV業界を取り上げた「虚像の砦」を読んだわけです。 ハゲタカ、ずいぶんひどい表現ですが、アメリカ的に高いフィーを払ってクライアント自身痛みを伴う改革を強制させる業界はひどい言われ方をされるものらしい。前いたコンサル業界にいたときに言われた、クライアントの最大のほめ言葉は、「麻薬」(一度コンサルサービスを受けたらやめられない、という意味で)。けなされるときは、「寄生虫」(クライアント企業に巣食ってカネを吸い取るから)。 良くても悪くても、ロクな表現をされないもんだ、と思ったもんです。 でも、世の中では、ハゲタカが安く債権を買い叩き、問答無用にできるだけ高く売る、この姿勢をボロクソに思っていたし、非難していた(批判ではない)。 けど、その裏返しで、なぜにハゲタカに売らねばならないのか?という銀行側の裏事情を全く考慮していない。 そんなに不良債権をなぜそもそも持っているのか?そして、なぜちゃんと回収できないのか?つまり、ハゲタカが別にやくざを使わずに回収できるものを、なぜに銀行が回収できないのか? 半分くらい、借り手の放漫経営のせい、半分くらいは、貸し手のよからぬ理由(政治家に頼まれた、幹部の家族や不倫相手に過剰貸し出しした、など)だ。 だから、互いに馴れ合い関係で、捨てないといけないのに、だらだらと持っている。銀行としては不良債権という膿を洗いざらい出してしまって、身軽にならないといけないのに、その償却損失があまりに膨大なので、怖くて外に出せない。 それを、ハゲタカに売るという形で、その銀行側のよからぬ理由を不問にしてとりあえず、外に出す。そのよからぬ理由を不問にする代償が、ハゲタカの儲け部分だ。(中身や各案件の売買価格を公開しないから) もし、ハゲタカに売らずに自分で自浄努力をする場合、このよからぬ理由は社会に漏れ、幹部を大概クビにする、という、もっとつらい痛みを伴うはずだ。 それを、責任所在をうやむやにしたまま、焦げ付き程度で済ませれば、またいつの日にか、同じ過ちを犯すリスクを将来に押し付けたわけで、本来ならば取るべきではない。 それを、より痛くない選択肢をたまたまハゲタカが提供し、うまく銀行が使った。 それで、銀行は被害者面して、ハゲタカだけ非難されるというのも、筋違いというものだ。 そして、全く同じような場面を「虚像の砦」で描いている。 それは、イラクに自衛隊派遣している間に起きた、日本人誘拐事件。3人捕らえられ、何日間後に釈放された事件。 なのに、政府は渡航しないように勧告をだしているのに、イラクに行っちゃった日本人の命を政府は守らないといけないなんて、政府が被害者だ、といわんばかりの態度だった。また、メディアも、誘拐されている人の家族の、犯人の要望通り自衛隊を撤退させろという叫びを、理不尽だというように誘導していった。 本来ならば、そもそも自衛隊を派遣すべきだったのか?が議論の対象となるべきだったし、(最初から法的根拠なんかなかった。単なる、湾岸戦争でカネだけしか出さないといって欧米メディアが作り上げた「国際世論」が悔しかったから、勇み足で簡単に派兵しちゃった)怒るべきは、誘拐犯の方で、被害者の家族じゃなかった。 きっと、アメリカの場合だったら、メディアは、誘拐された家族にはあまり行かない(いっても、最初の心配であるという声明を本人が出すか、地元の広報とかに依頼する)。例えば、北朝鮮に無断侵入してクリントン元大統領に救出されたメディア人の家族はそんな対応をした。 そして、メディアも、誘拐された人の経歴までは報じたけれど、その家族がああだこうだ、とかは別に報じていなかった。 むしろ、二人を捕らえた北朝鮮はどんなに変な国か?ということにフォーカスしていた。 そう、日本の場合、最初から最後までゆがんでいた。 なぜ歪むんだろう? そりゃ、もちろん、いろんな人の思惑はある。 けど、それをいうなら、アメリカにだって、あります。けど、絶対正論を吐いている人もいる。パールハーバー直後にアメリカは太平洋戦争が終わったら、日本ととっとと同盟を組むべきだといった学者もいるくらいですから。(実際、これをやっちまうんだから、恐れ入る)そして、この学者は別に非国民と言われることもなく、学術研究に普通にいそしんだ。 日本でやったら、投獄モノですがな。 ええ、まっとうな意見をちゃんという勇気が尊重される。逆に風見鶏よろしくいうことをころころ変えていると、馬鹿にされる。(マケインのようにやりすぎかつ、強気で強行突破しているつわものもいるが。。。) そういう勇気が、「長いものに巻かれろ」とか、処世術の前に脆くも負けてしまう。そりゃ、処世術が必要ないとは言わない。けど、大事件のときに、処世術を優先すべきか、正論を優先すべきか、の判断ができない場合が多すぎる、というべきなのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 16, 2010 02:25:40 PM
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