オレ教
別に自分のことを他人には言わない方なのだが、今日はなんとなく、書いてみる。この国の人々は大抵無宗教だが、私もそうである。ただ、山に登り始めて、ああ、神さんっつーのもおるんやろな、と感じる。私は無宗教だが、宗教に近い概念を持っている。オレを信じる「オレ教」。オレは唯一神で、信者は私一人。オレの進む道は絶対に正しい。間違っていても、正しいと思う。思い込む。失敗したな、と思っても、いや、実はこれで良かった、と思う。思い込む。私は寝付きが悪い方で、布団に入って寝付くまでによく「オレ」が現れる。「おい、今度の山、アレでええんか?」「んー…もひとつ先まで行きたいけど、時間がなあ…」「でも行きたいんやろ?今日かてあのテッペンからの写真、ずっと見てたやないか」「いや、見てみたいけど、一応、山の行動は8時間以内って…」「8時間で行ったらええやん」「んなムチャな」「いっつも無茶やっとるやないか」「まあ、それもそやけど…」「よう考えろ。おまえは山に登る。めっちゃええ天気や。夕方、写真撮りに表へ出る。そん時にや。あのテッペンが見えた時の自分の気持ち、よう考えてみいや」「悔しいやろなあ」「せやろ。後悔は、アカンで」「行くか」「よし、行っとこ」「アカンかったら引き返す」「よう分かっとるやんけ」随分フランクな神様があったもんだが、オレやから仕方ない。以前は、特に20代の頃は毎晩のようにオレと話をして進む道を決めてきたっけ。人間関係。仕事。道楽。大きい買い物。小さい買い物。今の配達の仕事に変わってからは比較的寝付きがよくなり、オレはあまり現れなくなった。ただ、山でものすごくしんどい時に現れたりする。歩きながらブツブツ言うてたり、こないだは雷鳥と話をしてた。どうせ行くなら、少しでも遠くまで歩いていきたい。長く居たい。貧乏人根性丸出し。続かない。