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珍獣は闊歩する!

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2019年12月04日
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有名なSF小説を読んでみる第6回です。「ドゥームズディ・ブック」のコニー・ウィリス先生なのでまた歴史タイムトラベルだと勝手に思っていたのですが、これは臨死体験の謎に迫るという、また全然違ったテーマの作品となっております。舞台はアメリカ、コロラド州デンバァーのマーシー総合病院。医療系SFです。

登場人物
・ジョアンナ・ランダー  主人公。若い認知心理学者
・リチャード・ライト   若い神経内科医。臨死体験の研究をしている。ジテタミンを発見。
・ヴィエル・ハワード   ER勤務のベテラン看護師。主人公の友達。姉御肌。
・アイリーン       主任の看護師
・モーリス・マンドレイク 大ヒットノンフィクション作家。臨死体験は死後の世界からのメッセージだと主張。
・ブライアリー先生    主人公の高校時代の国語の教師。姪に介護されている。
・キット・ガーディナー  ブライアリー先生の姪。金髪の美女。ジョアンナに協力する。
(患者たち、臨死体験者たち)
・グレッグ・メノッティ  週3回のワークアウトを欠かさない34歳の男。
・ミセス・ウーラム    心臓病で入院している老婦人。キリスト教を妄信。物語の途中で亡くなる。
・ミセス・ダヴェンポート 内科に入院している臨死体験者のおばさん。全然死なない。モーリス・マンドレイクに思想を誘導されてしまっている。
・メイジー・ネリス    ウイルス性心内膜炎で入退院を繰り返す少女。神もあの世も信じない現実主義者で、死後、自分の死体が名前のない死体として葬られるのを恐れている。
・カール・アスピノール  通称コーマ(昏睡)のカール。意識がないまま入院しているおじさん。妻の献身的な看護?を受けている。
・ウォジャコフスキー   プロジェクトの被験者。年齢不明のおじいさんで虚言壁があるが、太平洋戦争には出ていたらしい。
・アミーリア・タナカ   プロジェクトの被験者。医大生。プロジェクトを途中で辞める。
・ミセス・ヘイトン    プロジェクトの被験者。NPO活動をしているおばさん。予定が合わず、プロジェクトに途中からこれなくなる。
・ミスター・セイジ    プロジェクトの被験者。無口な男。

 あらすじ
ジョアンナはNDE(臨死体験)の原因と働きを科学的に解明するために、臨死体験者の聞き取り調査を行っているところ、リチャード・ライトと出会い、共同研究をするようになる。被験者にジテタミンという薬物を投与し、人工的に脳を臨死体験と同じ状態にし、頭に電極をつけて被験者の脳の活動や分泌されている脳内物質を調べて、そこから心停止した患者に投与するだけで心臓の再鼓動を引き起こす薬を作るのが目的だった。プロジェクトの被験者はもちろん、インチキ作家マンドレイクに影響されていない、オカルト的なものを信じていない人間を念入りに面接して選び出した。しかし、被験者の語る臨死体験の記憶は、「あの世」の存在を感じさせるようなものばかりでジョアンナを戸惑わせる。しかも被験者たちは、臨死体験を続けるうちにジョアンナを避けるようになり、被験者を辞めるものも出てきた。ジョアンナは意を決して自分自身が被験者になること志願し、人為的な臨死体験を体験することにする。そこで見たものは細長い通路と扉。扉の向こうには白い服を着た人間達が、まるで神か天使のように会話していた。そこで何度も現実に引き戻されてしまいながらも、目覚めた後の寒気に見舞われながらも、ジョアンナはあきらめず「あの世?」の世界へ降下を続ける。ジョアンナの見る世界は、どうやらタイタニックだということが「わかった」。他の臨死体験者もタイタニックを見ていたに違いない!しかしなぜタイタニックだと「わかった」のか?タイタニックの話をするのが好きだったブライアリー先生の家を訪ねると、先生はアルツハイマー病によりほとんどの記憶がなくなっていた。姪のキットに高校の教科書を探してもらいながらも、癖で先生に質問することが辞められなかったジョアンナは、先生からとうとう助言をもらう。先生はジョアンナの質問をゆっくりと15分ほどかけて咀嚼していたのだ。

「先生、なぜ彼(グレッグ)はタイタニックを見たんですか?」
「彼はタイタニックを見たのではない。死を見たのだ。そしてそれはタイタニックに似ていた。」

臨死体験の映像は、人によって違い、ジョアンナの場合はタイタニックだったというだけのことで、人によっては花畑、霧の中、飛行船といろいろなものを見ていて、共通点がなんなのかを突き止める必要がある。夢の共通点がわかれば何のために臨死体験をしているのか、体の中でなにが起こっているのかがわかる。ジョアンナは面接記録の文字起こしを見返し、蛍光ペンで共通するワードをチェックしていく。そこで、植物状態だったコーマおじさんが目を覚ましたという知らせを聞き、ダッシュで面接へ向かう。コーマおじさんはジョアンナが誰かもわからぬまま、とりあえずは医者なんだろうと信用し、気さくに話し始めた。「点滴のことをずっと蛇だと思っていたよ。」「アパッチが攻めてきて腕に矢がささった。」「アリゾナの砂漠にいて、リオグランデ行きの列車に乗ろうとしていたんだ。」「ポニー速達便を届けるために馬に乗っていたが遠すぎた。」「電線を探したが切られてしまって、最後は火を付けて狼煙を上げたら目覚めたんだ。」ジョアンナは閃いた。臨死体験の目的がわかった。脳の働きが。リチャードに早く伝えなくては。一刻もはやく……!!

いや~すごかったですね。最初の60ページくらいで「あ、これは名作」ってわかっちゃう。伏線の張り方が巧みで、どんどん引き込まれる。会話は完結で明快。アメリカドラマの文字起こしにしか見えない。洋画吹き替えのベテラン声優がキャラのセリフを脳内で読んでくれました。話の展開は典型的な医療サスペンスですね。安心して読めます。読後感としては、読み終わったときの解放感はかなりありましたが、結局グレッグが死ぬ直前に言った「58だ、彼女は遠すぎる」の意味が全く解決されないままなのはもやっとします。58がなんなのかを解明する物語ではなかったということなのね。58はメタファーの一つで、彼は58番目の地下鉄の駅にいたかもしれないし、冥界エレベーターで58階までいっちゃってたかもしれない。臨死体験映像として何を見ていたのかはわからないけれども、体内では心臓を動かすために脳内の神経を探る動きがあり、そのアクセス過程に障害があり、絶望していたんでしょうね。人間の想像力は地獄天国や来世を作り上げるけれども、原始的な、身体を動かす中枢としての脳みそは、「死」というものを一切想定していないし、「死」を望んでもいない。死の瞬間まで、本当に最後まで脳は希望を失わないのだという結論が、とても美しく、命の素晴らしさを感じました。リチャードの医師への向いていなさ(死を受け入れない、血を見ることが苦手)とか、田中エミーリアのしょうもない嘘にイラッとさせられましたが、絶対に読んだ方がいい本でした。読み途中で、「誰だっていつ死ぬかわからないし、自分もいつか死ぬんだ」とめちゃナーバスな気持ちになったけれども、最終的には死が途方もなく「無」であるからこそ、限りある命だからこそ、生きたいように生きて、大事な人を大切にしたいと思いました。

人類の想像による地獄の世界が赤いのも、死にゆく脳の視覚野が弱った結果、赤しか認識できなくなって、臨死体験で赤い世界を見てしまうからなんですね。すべては科学的に説明できるというところに、子どもの頃には感じることができなかった恐怖を感じました。こういう知識がもっと欲しいです。





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最終更新日  2019年12月04日 13時49分05秒
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