RX-78系、RGM-79系のスラスター推力について(+追記+追記)
休み中なのでガンダムネタ増量中ということでw今回はカタログデータ的な内容から論考していこうかと思います。スラスター推力というのは要するに(重量と併せて考えれば)加速力を決定付けるスペックになりますが、多くの場合は【スラスター総推力】という形で一まとめにされていたりします。しかし、きちんと各スラスターの推力配分まで設定されているモビルスーツも多く、一部の資料においてそれが記されています。系列機で比較検討し易いという理由から、今回はRX-78“ガンダム”系とRGM-79“ジム”系をピックアップすることとし、数値のみが判明しており、その配分が不明の場合は各スペックに該当すると推測される部位も()にて併記します。単位は全て[kg]です参考資料はB-CLUB VISUAL COMIC 機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争VOL2(ファーストと0080登場MS分)ENTERTAINMENT BIBLE 機動戦士ガンダムMS大図鑑 各号(0083登場MS分)1/144キット RMS-179“ジムII”解説書(RMS-179分)【RX-78“ガンダム”】、【RGM-79“ジム”】共通24,000×2(バック・パック)、3,750×2(足裏)<合計:55,500>…基本的にバック・パックと足裏にしかスラスターが装備されていないので配分もほぼ間違いないでしょう。正確に言えば初期の設定画では足裏のスラスターは噴射口が片足につき2つあり、更にその内部に4つのスラスターがあります。3,750という数値は半分にすると1,875で、後述する【0083】登場MSと極めて近い数値となり、このことからも一つの噴射口あたり1,875であると言えそうです。なお、劇中においてガンダムは途中から足裏スラスターを追加したはずですので、初期段階でのスラスター推力は恐らく48,000ということになります。【RGM-79C“ジム改”】12,500×4(バック・パック)、1,870×4(足裏)<合計:57,480>…バック・パックが2発式から4発式に変更した程度で、実のところスペックは初期型と大差ありません。【IGLOO】にて後期型として登場しますが、この頃から既にこのスペックだったとしてもなんら不自然ではないですね。【RGM-79D“ジム寒冷地用”】15,000×4(バック・パック)、(1,870×4)(足裏)<合計:(67,480)>…D型に計上されている主スラスター推力は60,000とされていますが、設定画では足裏にもスラスターが確認出来、その数値は1,870である可能性が極めて高いため、あえて加算してみました。こうしてみるとC型→D型で大幅にスペックが強化されている様子が伺えます。バック・パックの形状は同じ4発式スラスターであり、C系列装備の強化パックと考えられます。【RGM-79G“ジム・コマンド”】26,500×2(バック・パック下面両脇)、7,000×2(バック・パック下面中央)、(1,870×4)(足裏)<合計:(74,480)>…G型に至ると初期型より1ランク上のスペックと言うべきでしょう。この数値だけなら【Zガンダム】に登場する第2世代MSに匹敵するのですが、こちらも明らかに抜けているスラスター推力がある機体が多いこと、本体重量が10t前後の開きがあることなどから、一概に比較は出来ません。【RGM-79GS“ジム・コマンド宇宙用”】21,000×2(バック・パック下面両脇)、16,000×2(バック・パック中央)、(1,870×4)(足裏)<合計:(81,480)>…強力な推力を誇ります。しかしながら実は全備重量がG型より20tも重かったりします。武装もさほど変わらないことを考えればプロペラントの差なのでしょう。そう考えると加速性そのものはG型と大差ないのでは…試しに比推力を計算してみると、スラスター推力/全備重量でG型:74480/56400→1.32GS型:81480/76500→1.07意外にもG型の方が比推力では上回ります。G型は重力下でジャンプするために1を大きく上回る数値なのでしょうか。GS型は高機動型というよりはむしろ航続距離を延長させるためにプロペラントの搭載量を増やしたタイプだと言えそうです。【RGM-79R/RMS-179“ジムII”】15,500×4(バック・パック)、(1,875×4)(足裏)<合計:(69,500)>…足裏スラスターは多少強化されている可能性はありますが、RGM-79からの直接の改修機が多いことを踏まえ、1,875としました。総合的にはD型に極めて近い数値です。その上、スラスターの配分は全く同等で全備重量も全く同じ。このことから、R型は実のところD型に近い機動特性なのではないかと予測されます。D型の解説には『RGM-179とMSA-003とに分派される直前の機体』などとされていますが、スペックを見れば確かにRGM-179に受け継がれているようです。<ここから追記>ここまでのMSでは初期の地球連邦軍MSの機動性の面での特色を伺うことが可能です。つまり、スペックこそ上下しますが基本的にはバック・パックに推力が偏っており、補助的に足裏にサブ・スラスターを装備しているだけだということです。上記の2つの特色はRX-77系にも見られるものです。バック・パックに推進系が集中しているということは、即ち重心近くに推進系が集中している、つまりは飛行性能は安定志向だと思われます。足裏にサブ・スラスターを装備しているのはジャンプに都合が良いからであろうと想像されますが、宇宙空間ではAMBACとの併用によって姿勢制御を行う目的だったのかもしれません。ここから先はよりハイエンドな機体を見ていきます。【RGM-79SP“ジムスナイパーII”】21,000×2(バック・パック中央)、15,000×4(フクラハギ下)、(1,870×4)(足裏)<合計:(109,480)>…SP型ははっきりと判明しているだけでも10万kgを上回る総推力を誇りますが、その他の機体と同様に考えていくと実は更に開きがあるという結論に達します。ここで足裏のサブ・スラスターは問題ないとして、問題はバック・パックの推力なのですが、縦2ヶのスラスターとそれを挟み込むように両脇にスラスターと思しきユニットから構成されています。しかし、アポジモーター数を見るとこの2箇所を入れて丁度になるようですから暫定的にこの数値は無視します。(これをプラン1とします)もう一つの考え方としてはSP型のバック・パックは後のMSA-003とほぼ同型であり、MSA-003から類推するということも可能です。MSA-003のスラスター推力の配分は18,200×2,13,800×2となっており、18,200×2がバック・パック中央と見立てると、13,800×2はフクラハギ下かバック・パック両脇のどちらかとなります。前者であるならば問題ないのですが、後者である場合、MSA-003のスラスター推力もフクラハギ下のスペックがすっかり抜け落ちていることになり、逆にSP型のスペックもバック・パック両脇のスペックが抜け落ちている計算になります。(これをプラン2とします)実のところ、MSA-003とRGM-79SPの相関性のみに着目した場合、プラン2の方が都合が良いことがわかります。SP型→MSA-003という過程においてスラスター推力を抑えたことは良いとして、フクラハギ下の推力は半分以下であり、これはわざわざスラスター配置を類似させた意味を失います。またプラン2の考え方によって両者のスペック差そのものを小さく見積もることが可能です。と長々と書いた割りにSP型についての今回の主なテーマは上記ではなく、SP型のようなハイエンド機の特色として脚部にバック・パックに匹敵する強力な推進器が装備されているということです。即ち、姿勢安定性に優れた重心点に近い位置でのスラスターの集中配置に対し、あえて重心点付近(=バック・パック)とそれとは逆に、重心点から極力離れた位置(=脚部)にスラスターを分散させるメリットとは何なのか、ということです。【RX-78NT-1“ガンダムNT-1『アレックス』”】35,000×2(バック・パック)、8,000×6(フクラハギ外側×2×2、フクラハギ下×2)、7,000×2(股間後ろ)<合計:(132,000)>…足裏にもスラスターがあったように記憶しておりますが、今手元に資料がないので省略します。(確認次第追加します。)総推力だけ見比べてしまうとRX-78-2と大きく開きがありますが、配置を踏まえるとRGM-79SPと同様の傾向を見て取れます。つまり推力の1/3以上は脚部に移されているということです。このことから、NT-1型では単純に推力が大幅に強化された、というだけでは説明がつかない別の設計意図を読み取ることはできないでしょうか。(単純に推力を強化したいのであればバック・パックの推力を強化すれば良いだけのはず)つまり、安定飛行をする場合はバック・パックのスラスターを使用し、宇宙空間でのベクトル変更しながらの複雑な機動をする場合には脚部のスラスターを用いるのではないかということです。上記の仮説が正しいとするならば、RX-78-2→RX-78NT-1での主スラスター推力の差は(NT-1型スラスター総推力)/(2型スラスター総推力)→132000/55500→2.38(NT-1型バック・パック推力)/(2型バック・パック推力)→70000/48000→1.46このように2.5倍弱ではなく、1.5倍弱ということになります。更にRGM-79GとRGM-79GSを比較したときと同様、比推力で換算してみましょう。(NT-1型バック・パック比推力)/(2型バック・パック比推力)→(70000/72.5)/(48000/60)→1.21こう考えると実は通常飛行時のNT-1型の比推力は2型の1.2倍に過ぎないということにならないでしょうか。さて、この脚部にサブ・スラスターを装備するという傾向は後々まで続きます。その最たる例がMSZ-006“Zガンダム”であり、判明している推力はバック・パック(MSZ-006の場合、フライング・アーマー)のものではなく、あくまで脚部とスカートの総推力に過ぎません。これは特例ではありますが、単純に総推力だけを比較するよりもスラスター配置も加味した方がよりMSの進化の傾向を探る上では重要ではないでしょうか。一応、今回のまとめを書いてみます。1.初期連邦製MSは安定飛行志向であり、スラスターは重心に近いバック・パックに 集中している。2.RGM-79系で言えば上記の傾向はSP型のような特殊なハイエンド機を除けば大抵の 機種に共通して言え、それはRGM-79R/RMS-179まで継続する傾向である。3.スラスター推力のみに着眼した場合、いわゆるノーマルなジム (グレートメカニニクス誌にならってここでは仮にB系列機と定義します。) とC系列機では大差がない。それに大してD型から連なるG型、GS型、SP型 といった機体郡(ここではD系列機と定義します。)では完全に1ランク上の スペックが付与されている。4.RGM-79R/RMS-179の開発においてはスラスターのみに着眼した場合、 RGM-79Dをベースにした可能性が高く、一年戦争時代に開発されたものが ほぼそのまま流用されていると推察される。5.RX-78NT-1やRGM-79SPのような一年戦争末期のハイエンド機については 総推力だけで見比べてしまうと在来機種と大幅な開きがあるように感じられるが、 単に推力が強化されたというのではなく、あくまで追加されたスラスターは脚部 に集中しており、加速性の強化よりも運動性の強化に主眼が置かれているものと 推察される。見にくいのでちょっと整理してフリーページに移すかなぁ…