本のタイトル・作者
ねこマンガ 在宅医たんぽぽ先生物語 おうちに帰ろう [ ミューズワーク(ねこまき) ]
本の目次・あらすじ
第1話 石鎚山の力
第2話 こりゃまたおいしい!
第3話 おすしとケーキ
第4話 生きがいと生きる力
第5話 笑顔の生命力
第6話 住み慣れた場所で
第7話 最期の3日間
第8話 誰かがみていなくてもいい
住み慣れた場所で受ける医療 初めての在宅医療なんでもQ&A
100人いれば100通りの方法でサポート 命に向き合い寄り添う在宅医療
引用
ゆうの森は、患者さんの「これがしたい」という希望を覗ったとき、「ダメですよ」という否定から入るのではなく、「いいですよ」と受けとめ、専門職のチームが協力してかなえるための最善の努力をする、そんな集団でありたいと願っています。
患者さんもご家族も、病気だから、障害があるから「できない」とあきらめるのではなく、自分らしく生きるために何がやりたいのか、どうすればできるのかを考えていただきたいのです。
もちろん、すべてがかなえられるわけではないでしょう。でも、限られた時間のなかで自分がやりたいことがひとつでもかなえば、また、かなわなかったとしても、かなえるためにできることをしたり、一緒に考えたりする過程が、患者さんの生きる希望になり、ご家族にとっても大切な思い出になる、そう実感しています。
感想
2022年272冊目
★★★
・
ねこマンガ 在宅医たんぽぽ先生物語 [ 永井康徳 ]
の続編。前作がとても良かったので続きを。
実在する愛媛県松山市の在宅医療専門クリニックを舞台にしたコミックエッセイ。
今回は、研修者2名がやってきたという設定。
人物をネコに置き換えたイラストも可愛くてほのぼのしてる。
でも内容は色々と考えさせられる。
余命一カ月と宣告されたワタルさんに、研修医は「もう何もできないのに、やりたいことを聞くくのは可哀想」だと言う。
それに対して、先輩は「できるかできないかではなく、やるかやらないか」と答える。
山登りはできなくても、部屋の大型スクリーンに映像を映し出すことはできる。
そしてそれを機に、ワタルさんは元気を取り戻していくのだ。
最後にあった「日本の医療現場では死は敗北」という言葉。
だから負けないように、治療を加え続ける。
それが苦痛であっても。
死が敗北だというなら、私たちは最後にはみんな負けるのだ。
生まれた時から、負けることが決まっている。
宿命づけられた死。
そこに向かってただ生きているだけなのだとしたら。
私たちが今生きている今さえ、決定的で不可避な「負け」へ向かっているだけじゃないか。
負けるために生きてるみたいじゃないか。
違う、と思う。
何かで前に、子供に「なんでいつか死ぬって分かってるのに、ぼくを産んだの?」と問われ即答できなかったという母親の話を目にした。
いつかすべてが無に帰すのだとしたら、あらゆることは大局的には無意味なのだとしたら、徒労に終わる負けるための戦いなのだとしたら。
私たちはこんなに懸命に、もがきはしない。
在宅医療は、その人らしい終わり方を迎える手助けをする。
死ぬことは、それまで生きてきたことの総まとめのようだ。
「どう死ぬか」は「どう生きるか」を考えることだと、著者はいう。
それは全く敗北ではない。
むしろ勝利と呼べるもの。
産まれて生きた、集大成。
―――いつか死ぬと分かっているのに、なんで産まれたの?
でも私は、いつか死ぬと分かっていても、会いたかったのだ。
今この時を、一緒に生きてみたかった。
あなたと。
だからどうか楽しくやってくれ。
このろくでもない美しい世界で。
―――いつか死ぬと分かっているのに、なんで生きるの?
その答えをきっと、死を迎える時に、求められるんだろう。
私は、死後に神様に生まれる時に与えたものをすべて返して、なお残るものが今世であなたが得たもの、という話が好き。
その時に何が残っていてほしいか。
自分らしい答えを出せるよう、在宅医療が選択肢のひとつとして当たり前になっていけばいい。
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