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テーマ:映画館で観た映画(8351)
カテゴリ:邦画(07)
ベテランと新鋭監督の豪華共演。「こんな夢を見た」という一言から始まる夢のオムニバスというアイディアは黒澤明の発明かとずーと思っていた。実は今から100年前に文豪夏目漱石先生がすらりと書いていたのだ。しかもこの言葉にほとんど拘っていない。
監督 : 実相寺昭雄 、 市川崑 、 清水崇 、 清水厚 、 豊島圭介 、 松尾スズキ 、 天野喜孝 、 河原真明 、 山下敦弘 、 西川美和 、 山口雄大 出演 : 小泉今日子 、 うじきつよし 、 香椎由宇 この映画、しかし残念なことに見るべき絵は4夜のみであった、というのが私の評価。とくに「リンダ、リンダ、リンダ」の山下監督に至ってはまったくの楽屋「落ち」であって、あれはやっちゃあいけないでしょ。清水祟監督は原作をうまいこと活かしながら、得意のホラーを披露する。夜中に自分の赤ちゃんを負ぶって散歩に出ると、いつの間にか赤ちゃんの目は無くなっていて、しかもすべて悟ったように喋り出す、というもの。もしかしたら、いつもより怖かったかもしれない。とはいっても、原作のほうがもっと怖いのだけどね。松尾スズキ監督の「運慶」は傑作だった。まさかあの章をあそこまでヒップホップに変えてしまうとは。彼の作品「恋の門」を見損なっているのが悔やまれる。「ゆれる」の西川美和監督の担当したのは第9夜。原作の江戸末期を太平洋戦争の時代に移し変えてみる。彼女らしく、セリフがある場面よりは、ない場面のほうが雄弁にテーマを語る。オーソドックスだけど、どうどうとした心理劇であった。最終話は山口雄大の作品。この監督まったく知らなかったのだけど、本上まなみが痛々しいほどの体当たり演技をしていて、(いや、本当はものすごく楽しんでいるのかもしれないが)ぶっ飛んだ。いや、それだけじゃなくて、笑いの中に非常に怖い部分があって、凄い作品になっている。冒頭の実相寺昭雄監督は最後の最後まで映像美の監督であった。合掌。 今回映画に先立ち、原作を読んでみた。古本屋で一冊100円の緑の表紙の1970年発行旺文社文庫を見つけたからである。小田切進がなんと20Pにもわたる詳しい解説を書いていて、さすがあの頃「中学生のための文庫全集」だっただけある。(しかも注が全頁に渡って付けられている。)そして、その中のたった34Pに満たないこの短篇を読む。そのあまりにもの「シュール」さに度肝を抜かれた。「私のこの作品は100年たたないと理解されないだろう」と漱石は言ったという。至言である。さて、100年後に映画は作られた。残念ながら、夏目先生の文の力のほうがまだまだ勝っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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