テーマ:女性ヴォーカル(44)
カテゴリ:洋ロック・ポップス
もう一人の自分=スカーレットの旅 トーリ・エイモス(Tori Amos)自身をイメージしたスカーレットなる人物が全米各地を旅するという設定のコンセプト・アルバムが本盤『スカーレッツ・ウォーク(Scarlet’s Walk)』である。デビューから15年間在籍したアトランティック・レーベルを離れ、エピックに籍を移して2002年に発表した、移籍第一弾アルバム(通算ではスタジオ6作目)である。 全18曲の旅路はCDのブックレットに地図(“トーリ・エイモス『スカーレッツ・ウォーク』・オフィシャル・ロードマップ”と題されている)が掲載されている。旅といっても、スカーレットの旅は、決して楽しく全米各地を観光して回るといった性質のものではない。曲調も詞の内容も決して明るいものではなく、むしろ内省的である。それもそのはず、2001年のいわゆる“9・11”を契機としてアメリカの国威発揚の機運が高まる中での作品だった。これら一連の国家的“盛り上がり”を違った眼差しで見つめていた米国人たちもいたのである。そんな一人がトーリ・エイモスであり、アメリカ社会の陰の部分や大国家アメリカに潜む大きな闇のようなものを辿る旅とでも言えばよいだろうか。内容・メッセージ的な面では、ブルース・スプリングスティーンの1995年作アコースティック盤『ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード』的な物語性や、ストーリーテラーとしての側面と相通ずる。要するに、“内なるアメリカ”を暴くような眼差しを投げかけている、メッセージ性の強い作品である。 こういう作品を聴いていると、ある意味、アメリカ合衆国という国は面白い国だと思う。9.11.テロの直後など(わりと最近ではビン・ラディン殺害ニュースの時も)では、国民的に異常な盛り上がりを見せ、他の国から冷静な目で見ると自己中心的な解釈に国中が沸くという、なんとも節操のないお国柄のように見える。ところが、芸術活動や創作活動の部分になると、こういう自分たちの属する社会の欺瞞や奢りへの静かな問いかけがコンスタントに発信される。それは、良い言い方をすれば、表現の自由が保障されているから(つまりは「自由の国、アメリカ」)と言うこともできるだろう。一方、辛辣な見方をすれば、そういう冷静な洞察力が実際の国民感情や政治運動に結び付きにくい、いわば国民全員参加の民主主義の負の部分の裏返しを反映してもいるのかもしれない。 本盤の18曲の合計収録時間は74分という長尺なものだ。しかし、過去の記事(『ザ・ビーキーパー』の項を参照)でも指摘したように、このトーリ・エイモスという人は長時間聴かせる特殊な才能のあるアーティストで、その力量は本作でも存分に発揮されている。重いが、聴きごたえがあり、思索を巡らせてくれる一枚。 [収録曲] 1. Amber Waves 2. A Sorta Fairytale 3. Wednesday 4. Strange 5. Carbon 6. Crazy 7. Wampum Prayer 8. Don't Make Me Come to Vegas 9. Sweet Sangria 10. Your Cloud 11. Pancake 12. I Can't See New York 13. Mrs. Jesus 14. Taxi Ride 15. Another Girl's Paradise 16. Scarlet's Walk 17. Virginia 18. Gold Dust 2002年リリース。 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓ ↓ ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012年01月30日 05時33分46秒
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