『ユルスナールの靴』(須賀敦子)を印象深く読み、それでは自分でマルグリット・ユルスナールの作品を味わおうと図書館にたまたまあったこの本を開いた。それが私にとってよかった。
没後とりまとめられ出版された若書きの作品という。つまり、『ハドリアヌス帝の回想』などの大作を髣髴させ、それに比する小品らしい。なるほど、らしさが味わえたのではないかと思う。
「青の物語」「初めての夜」「呪い」の3篇。
「青の物語」はアラビアンナイトの物語風。「初めての夜」はフランス心理小説風。「呪い」はフランス片田舎のおどろおどろしい風習風。味付けはくっきりユルスナール風。
ユルスナール風とは、なにがどうと一口に言えないが、「がしっ」とつかまれるような強靭な精神がある。それに惹きつけられる。まあ、私が大作の方に向かうかどうかはわからない。(単に他の未読本を沢山抱えすぎているということだけどね)
久しぶりで白水社のフランス文学に親しんだ。なお、この本のブルーの濃淡が三色旗のような装丁もしゃれていた。(このごろ装丁も気になるようになったのだ)
残念、この単行本はなくて、「ユルスナール・セレクション(4)」に入っている。