『半身』『荊の城』がおもしろかったので、期待して読んだ。
前作のヴィクトリア朝とはがらっとちがう現代に近い時代が、やはりウォーターズ味付けで魅力的に描かれている。
また、「現在、過去、未来~♪」という歌ではないが、どんどん過去に後戻りして、謎というか原因がほどけていくのはちょっとスリルがあり、それがおもしろかった。
1947年→1944年→1941年と戦後や第二次世界大戦真最中、空襲激しいロンドンが舞台。たびたびの空襲警報下の都会で恐怖と共に生きる人々が登場人物。
ケイという魅力的で謎めくボーイッシュな女人をめぐる物語が軸。
レスビアンが主題でもあり、女性の性の問題でもあり、人間は孤独では生きづらいということであり、底には戦争批判がおおげさでなく渦巻いている。
前2作品がファンタジーらしかったのに、これは「世の中は原因があるから結果があるのよね」とふざけるわけにはいかない、真摯でリアルな作品でもあった。