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書評日記  パペッティア通信

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Apr 9, 2005
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これにハマる世の男どもは、どこを面白いとおもっているのだろう。
おいらは、よくわからん。

おいらは、断然、姉妹(スール)制度のもつ「権力関係」そのものに目がいく。
華族の令嬢のためにつくられた、カトリック系リリアン女学園。
高等部では、擬似的に上級生と下級生が、「姉妹」の関係をとりかわす。
妹はお姉様の手ほどきでしつけられるという。
姉妹の関係をとりかわすとき、授受されるロザリオというアイテム。

この女学園、「巨大な監獄」でなくてなんであろう?
てか、まんまパノプティコン(一望環視施設)じゃないの。
姉妹関係は、女性がより女性らしく振舞うことをもとめる。
姉の視線は、妹の身体に内在化され、妹の身体そのものを規格化してしまう。
こうして、姉にふさわしい妹になったとき、姉は卒業。
妹は姉となって、次の妹をさがし、この過程がくりかえされるのだ。
令嬢の再生産装置ですよ、旦那!!(なぜ、ここで旦那?)
姉妹制度は、ご令嬢をつくるシステムとして埋めこまれている。
「学校の黙認」なんかであるはずがない。

というか、全編が「悦び」の物語。
この小説の主人公福沢祐巳は、ロサ・キネンシス(赤薔薇様:生徒会長
そんな制度があるのです。わからない方は小説を読んでいただきたい)
小笠原祥子様にふさわしい妹になるために努力する。
姉がいなくても、妹になるようにふるまわせる、おそるべき監視装置ロザリオ。
承認願望をかなえられたとき、しばしば彼女が発する「お姉様!」のセリフ。
うううう。

「悦び」は、祐巳の身体をとらえて放さない。
「悦び」を介していざなわれる、象徴的去勢のない直接的関係性への回帰、
融合的一体化。
これ、そのまんま、ファシズムの穏喩じゃん。
てか、これくらいファシズムの愉悦を、融合的一体化の喜びを、
ダイレクトに謳いあげるライトノベルって、わたしは読んだ記憶がない。
なんて淫靡なイデオロギー装置であろう。
たいてい、男の欲望をそのまま投射するだけでおわるのに。
さすがは今野緒雪先生。女性だけにうまい。

というわけで、おいらは男どもに勧めてまわっております。
ところが、ルイ・アルチュセールやミシェル・フーコーなお話ができる人に限って、
なぜか読んでくれない。
悲しい。誰か読んでくださいな。
あと、結婚した男性も読んでくれない。
読むのは、もてなさそうなオタク野郎ばかりなんである。
あ、おいらもか。
まあ、オタクはファシストが多いから(笑)。

「これホント?」なんて言いつつ、読んでいる男には、女性は警戒したほうがいい。
男の欲望を捉えているのは、百合的な話なんかではない。
直接的関係性の回復を社会にむけて放つ、ファシズムの愉悦なのである、
な~んてね。

ネタバレになりますが、お話の方をそろそろ。
こんな話は、受け手における「転移」の問題であって、
この本とは本来なんの関係もないのに、長々とかいてしまってすみません。

今野先生は、とても繊細にお話をすすめている。
丁寧な複線のつくり方と、細やかな流れがとても心地よい。
やっぱり祐巳は可南子ではなく瞳子を妹に選ぶみたい。残念。
瞳子は「姉」になにをもとめているのだろう。
瞳子と乃梨子は、絶対同人誌かなんかで描かれるんでしょうねえ。
読みたいなあ。
そして由乃は、あの子とどんなスールの関係をつくるのだろう。
新聞部の新カップルはともかく、蔦子と笙子についてはおめでとうといいたい。
蔦子も祐巳も、細かい気配りができるからお幸せに。
前・三薔薇様揃い踏みは、ひさしぶり。

「中間報告」は、「選ぶ・選ばれる」にまつわる裸の関係を
ここまでアカラさまに出すのはちょっと暴力的かな、と思った。


評価 ★★★★
価格: ¥460 (税込)





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Last updated  Nov 4, 2006 03:07:32 PM
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