2085870 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

書評日記  パペッティア通信

書評日記  パペッティア通信

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Calendar

Category

Favorite Blog

桜木町駅ビルに110形… GKenさん

─ 灼熱 ─ HEAT1836さん
余多歩き くれどさん
tabaccosen breton005さん
ミョウの魅 stadanさん
ぶらぶらブラジル日記 Gaobrazilさん
沖縄でよんなよんな sinarsinarさん
りゅうちゃんミスト… りゅうちゃんミストラルさん
再出発日記 KUMA0504さん

Comments

山本22@ ブランド時計コピー 最高等級時計 世界の一流ブランド品N級の…
山本11@ 最高等級時計 店舗URL: <small> <a href="http://www.c…
よしはー@ Re:★ 小島毅 『近代日本の陽明学』 講談社選書メチエ (新刊)(09/26) 作者の独善性、非客観性をバッサリ切り捨…

Recent Posts

Archives

May , 2024
Apr , 2024
Mar , 2024
Feb , 2024
Jan , 2024
Dec , 2023
Nov , 2023
Oct , 2023
Sep , 2023
Aug , 2023

Freepage List

Keyword Search

▼キーワード検索

Jul 17, 2005
XML
death

L様…
L様が崩御あそばされた…(ToT)/~~~

さすがに、単行本派の私でも、殺されたことくらい知っています。それでも、単行本を読んだときはショックで、服喪してしまいました…父には27ヶ月らしいので、27時間ほどでしたけど…お隠れあそばされただけで、56億7000万年後に「マイトレーヤ」として復活!といった話にならないでしょうしねえ…(― ―;)

夜神月(ライト)と、名探偵L様。
キラと名探偵Lは、実は全然、ライバル関係になりえていない。
そう言うと驚かれるかもしれない。

90年代、新しく登場した主人公の類型、戦うサイボーグたち。
エヴァンゲリオンにのりこむ、碇シンジ。
幽遊白書の仙水忍。

何のために戦うのか。彼らは知らない。そのため彼らは、「戦い」やロボットの「操縦」という「行為」のそのものの中に、自己を転移させてしまう。「転移」からの解放は、「死」もしくは、「人格改造セミナー」によるさらなる「転移」、しかなかったことに着目してほしい。この「わたし」という存在の意味を備給してくれる者の「不在」になやむ人たち。そこには、擬似的な「大きな物語」によって少年を大人にする、ガンダム的地平はすでに雲散霧消していることがわかる。ハルマゲドンに参戦したオウム信者たちの地下鉄サリン事件は、80年代的サブカルチャーの帰結とともに、その「終焉」もまた予告していたのである。

ところがライト=キラは、すでにこの90年代的地平にすらいない。
21世紀にふさわしい、斬新さが魅力なのである。

ライトは「わたし」の意味を備給してくれるものの不在に悩まない。
彼は、死神を殺すほどの圧倒的な頭脳をもったまま、「新世界の神になる」という、おそろしく幼稚な「物語」に、とっくに自らの実存を譲りわたしてしまっているのである。

大量殺人が恐ろしいのではない。

人の実存が、あまりにも卑小かつ陳腐なイデオロギー=記号に支えられ、世界と自分の問い直し=反省の契機を働かせることなく、起動しつづけていること。ここが恐ろしいのだ。卑小な「記号」へ、自らの実存を安易に譲りわたしてしまう現象…それは、「プチ・ナショナリズム」、「切れやすい若者」など、この現代日本の様々な場所で、あまりのも簡単に観察できる現象である。ライトは、あなたの周りに、いくらでもいるのだ。このマンガの面白さは、たんなるミステリー仕立ての部分にあるのではない。現代日本で増殖を続ける、この新しい人格類型を摘出しただけではなく、完璧なまでに動かしてみせた、その前衛性にあるのである。


誰もがとっくに気付いているに違いない。

ミサを、親父を、妹を、同僚を、騙しつづけることのできる、完全な周囲へのイメージ・コントロール。死神を殺し、Lを殺させる、完璧な計画を立てられるライト。

そのライトの圧倒的な他者への洞察力は、決して「自己」に対してだけは、向けられることがないのだ。

キラの性格をめぐる、Lとライトのやりとりを思い出して欲しい。

Lはいう。キラは自分と同じように「幼稚」である、と。
ライトはいう。キラは「純粋」である、と。

この絶望的なまでの自己診断の差は、この世界の神は誰であったかをあらためておもいしらせてくれる。

「旧世界の神」L様。
神の如き知性は、Lであってライトではない。

Lの白刃の煌きのような知性の光が、「月」ことライトの圧倒的な洞察力をすみずみまで照らし輝かせるのであって、その逆ではない。近代的な反省的知性を具現する、名探偵L。その知性は、「デス・ノート」のルールが虚偽であることまで、たどりついているのだ。敗北した理由は、ただ一つ。キラを捕らえなければならないLは、検証可能な客観的な証拠の提出という、反省的知性を産みおとした近代が課す、社会規則に縛られていたからにすぎない。大量殺人者キラを「殺す」だけなら、実に簡単なことだった… 

なんと理不尽な、不平等なルールだろう。
圧倒的な反省的知性は、それを産みおとした近代のまえに敗れ去ったのだ。
このハンディキャップをものともしないからこそ、Lは神の如き存在として、この作品に君臨したことは確かなんだけど…

それなのに、L様が死んでしまった。
もはや、作品全体に視線を張り巡らした、圧倒的な知性をもつ主体は、
このシリーズ半ばにして、消えてしまった。
いったい、どうするつもりなんだろう。
仕方ないことはたしかですが。

今の『デス・ノート』は、圧倒的知性をもつ幼児=21世紀の「動物」たちのサバトになってしまった。もはや、Lはいない。あとは、キラが意味不明の策謀を生き抜くだけの物語になってしまうのか。21世紀の動物であるライトは、反省的知性の陥穽におちたL様とおなじく、自己を診断できない落とし穴にはまってしまうことは確かだろう。しかし、だれが?どのように?

ああ。
ここまで凄い作品を読ませていただいて不満をいうのもなんだけど、
大場つぐみさん、大丈夫なんですかねえ。


人気ランキング順位





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jul 19, 2005 09:04:29 PM
コメント(4) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.