義務教育の間に読書の習慣を身に付けさせよう
義務教育は読み、書き、算盤に尽きると思いますが、読む能力は子供の時から訓練しなければ伸びません。総ての教科の基礎になるのは日本語の能力ですから、国語の時間を増やす話は良いのですが、英語の時間を設ける話は言語道断です。 映画「奇跡の人」によれば、ヘレン・ケラー女史は盲、聾の重複障害者でした。家庭教師のサリバン女史がアルファベットの指文字で示す、w,a,t,e,rが流れる水に手を触れながらwater、水を表しているのを理解したシーンは感動的でした。 ヘレン・ケラー女史のIQを200だと推定する人もいるぐらいですが、アルファベットの文字列が言葉を表し、意味を持つことを理解するためには、思考の飛躍が必要でした。人間は文字を発明することにより革命的な進化を遂げたのです。 人間は農耕を始めることにより定住生活を営めるようになりましたが、文字が発明されて文明が開花したのです。文字が発明されて初めて人間は抽象概念で思考できるようなりました。文字が文化を創り上げる原動力になったのです。 子供は先ず文字を覚えることが肝心なのです。ヘレン・ケラー女史のような天才でも文字が言葉を表すことを理解するためには多大な時間と努力がいりました。普通の子供はその過程を経なくても自然に文字を覚えられるからです。 仮名文字だけではなく漢字を覚えることも必要です。漢字は画像認識の能力が発達している子供の時に覚えさせれば比較的容易に覚えられるそうです。古典の素読は漢字に振り仮名を振れば低学年からできるので効果が期待されます。 国語の時間に漢字をゲーム感覚で覚えさせることも可能です。少なくとも義務教育修了者には新聞を自由に読めるぐらいの国語能力を付けさす必要があります。英語に使う時間があるのならば日本語の能力を高めるのに使うべきでしょう。 さらに、読書の習慣を子供の時から身に付けさせることが必要です。子供たちはテレビ、パソコン、携帯電話などから入る情報に左右されがちですが、本のページを開いて文章をゆっくりと読み、文章を味合う習慣が生活の質を高めます。 読書は単に教養を高めるだけではなく、思考力を高めます。受験教育では無視されがちですが、大人の世界に入れば読書量の差が人間の器量の差になって現れます。競争社会を生き抜くためにも、生活に色を添えるためにも読書が必要です。 一人の人間の経験できる世界は歴史の流れから見れば一瞬ですが、本の中には人間の歴史が詰まっています。時間、空間を越えた世界が本の中に広がっています。読書により人間が積み重ねてきた知識、文化を吸収することができるのです。 現代社会は多様な価値観に溢れています。情報は至る所から押し寄せてきます。情報リテラシー、情報を取捨選択する能力は子供の時から身に付けた教養次第でしょう。トップマネージメントに必要なのは思考力と高い教養だと思います。 教養のない人間が知識だけを身に付けた姿は、殺人剣を駆使した人切り以蔵、岡田以蔵を連想させます。知識は現代社会では最大の武器ですが、知識を活用するためには教養が必要です。知識だけの人間は破綻する場合が多いようです。 ゆとり教育に非難が集中していますが、読書、作文、素読などをゲーム感覚で楽しみながら子供たちに身に付けさせれば良いのではないでしょうか。作文の時間は苦痛でしたが、人生の後半を迎えれば楽しい思い出に変わるものです。