「お帰りなさいませ、ご主人様」
といって出迎えてくれた少し笑顔の足りない人形系の女の子。少し、怯みながらも、ただいまが言えず、中に進む。看板にはコーヒー390円。
店内には、デブの男3人組、初老のにこやかなサラリーマン、明らかにアニメ系ルックスの男二人(ずっとメイドを凝視している)、男女2人ずつの服装の冴えない若者。
テーブルには注意書きが書いてある。
店内は、こんな感じ、
というのは嘘で、テーブルの上には注意書きが書いてあった。私は注意深く読んだ。
1、 メイドさんに触れないで下さい。
2、 メイドさんの個人情報を聞き出そうとしないで下さい。
3、 写真撮影はしないで下さい。但し、食べ物についてはメイドさんに一言声をかけてくれれば撮影可。
4、 外でメイドさんに会っても、声をかけないで下さい。
5、 最長120分まででお願いします。
6、 メイドさんとのポラロイド写真390円。
やがて、メイドさんが注文をとりにきたのでコーヒーを注文した。後から入ってきたソレ系の男たちもコーヒーを注文した。
ノートが何冊も置かれていて、めくりながらコーヒーを待つ。この店の感想や、メイドさん宛のBBSのようなものであった。前に座っているメイドさんを見ると、1冊のノートに書き込み(多分、BBSの返事)をしている。これもアルバイトの一種なのだろうか。
冴えない初老のサラリーマンが帰ろうとする。その書き込みをしている女の子に「○○ちゃん、また来るよ」とその日初めてらしい声をかけていた。鼻の下が伸びていた。アニメが好きそうには見えない。
コーヒーが運ばれてきた。いつもブラックなので、断ったのだが、隣の男は、「フレッシュに砂糖3杯といった」
するとメイドさんは、コーヒーにフレッシュを入れ、砂糖を3杯入れてコーヒーをかき混ぜた。そして、親しげに、2,3言話して去っていった。今日だけは砂糖を10杯ぐらいいれてくれと、多少後悔した私であった。
それにしても、全員が常連のようではある。隣の男も、○○ちゃん、といっていた。
近くの客が帰ることになり、呼び鈴を鳴らし、メイドを呼んだ。
「お勘定を頼みます」
「え、お勘定って?出かけられるのですか?ご主人様」とメイドさんは言った。
そっか、出ます、帰りますではないのか・・・私は少し悟った気がした。
30分近くの時間が流れ、私も呼び鈴を鳴らし、精一杯の言葉をメイドさんに投げかけた。
「もう、お出かけします」と、下向き加減に小声で。
メイドさんは、喫茶店の出口を開けてくれ、道まで見送りしてくれた。
メイドさんは4名程で、繁盛はしているようであった。
萌えとは何だろう、私は思うのであった。
マンガ・アニメ・ゲームなどの登場人物やアイドルなどへの抽象的愛情表現、特徴や仕草、状況、特定のパーツ、その全て・・・「好き」や「可愛い」よりニュアンスの強い自嘲や揶揄を含む表現。大人の女を相手にできない男が、言うこと聞いてくれそうな美少女に対して使う腐った愛情表現?脳内的恋愛?
昼間は歯医者に行ったが、物持ちのいい歯医者(当然か?)で7年前に撮ったレントゲン写真と、本日撮ったそれを見比べていろいろ解説してくれた。
歯茎が加齢で痩せてきたこともあるのだが、「歯軋りしてませんか?そういわれませんか?」と尋ねられ、私は、自分で自分の歯軋りを聞いたことがないが、何となく家族がいるように思われたのではないかと思い、そうかも知れませんねえ、と曖昧な返事をした。
歯軋りとは、ストレスや単純な習慣、歯の並びの悪さなどの原因が考えられる。そんな訳で、少しだけ、歯を削らずに歯の調整のようなものをしてもらった。しかし、私のストレスや習慣はカンチンに治りそうにないのだが・・・あー、生きているだけでストレスだ。といっても死んでしまうのもストレスだ。というかストレスの度合いとストレスからの回復力であるわな。
奇しくも
8日は歯の日である。