さくら さくら
何故か、私は、滑り止めの私立大学に合格した後、本命の国立大学までの試験までの1ヶ月間気が抜けていた。私が国立大学に行こうとしていたのは、小学校の時から決めていた。理由は、安いからという以外に多くはない。勿論、どうしたいというのは、子供なのでなく、受験直前にしたって、研究者になり、流行のバイオテクノロジーで食糧を確保することに従事したいという思いつきの理由で学部を決めたのであった。倍率は国立なので、ほぼ実質倍率で4.2倍。
何故、気が抜けたのか分からないが、分からないままである。あれだけ、受験勉強3年間もしてきたというのに、ラスト1ヶ月で、何となく気が抜けてしまっていたのであった。
試験があり、長い合格発表の間、何をしていたかよく覚えていないが、スキーに行ったかもしれない。
合否発表の日、初めて大学まで見に行くことにした。長い坂を上っていく。降りてくる高校生の手に封筒を持つものは合格。持っていない者は不合格で、すごく残酷な気がした。そして、そこで、自分の不合格を想像した。駄目だ、駄目だ、といいながら、長い坂を上りきった大学のキャンパスに張り出された受験番号。
桜散る。
やよいの空は
そうして、浪人するか、理系から一転して、合格している文系に行くか迷った。迷ったが、妥協の産物が私を襲った。経済学部に行きながら、履修科目は、先輩方の楽勝科目を無視し、数学に、数理経済学、統計学、とにかく、誰も履修しない数学的なものばかりであった。
見わたす限り
そうして、私は、次第に授業に出なくなり、海外に消え、大学の1年が終わった時、単位を見て驚愕した。15単位。基礎ゼミ4、一般科目8、英語A2、体育1、以上。必須で落とした科目、英語B、ドイツ語AB経済学甲乙丙。
桜散る。
卒業まで125単位。
かすみか雲か
大学2年は奮起した。留年のリーチ科目は、英語B、ドイツ語AB、経済学甲乙丙、英語経済書講読、と経済原論と一般教養最低取得単位と9個のリーチを抱えたままチャレンジしたのである。後期試験に挑む勇姿。
桜散る。
23単位。留年決定。親に土下座決定。卒業まであと102単位。
9個のリーチを抱えたまま、2留年阻止という野望を抱えたまま、あくなき挑戦は続く。
33単位。桜ちょっとだけ散る。卒業まであと69単位。
いざや いざや
4年、5年生と私は努力を続け、学年を追うごとに大学に行く回数が増え、そうして愛でたく卒業。
桜の行方知らず。合計156単位、卒業必須単位を15オーバーぶっちぎりで卒業。5年で優3つの快挙。享年23歳。
見にゆかん
匂いぞ出ずる
さくら さくら
野山も里も
見わたす限り
かすみか雲か
朝日ににおう
さくら さくら
花ざかり