●輸出主導に未来はない・日本の経済成長戦略を問う●
昨日今日と少し持ち直したが、低迷を続ける日経平均株価は17日、為替相場で円が高止まりしているうえ、4~6月期の国内総生産(GDP)の落ち込みが鮮明になったのをうけてさらに下落、年初来安値を更新した。 ま、株価がどうなろうが「持たざる者」には痛くもかゆくもないのだけれど、株価は日本経済の実情を映す鏡(多少ゆがんではいるが…)であるからして、「知ったこっちゃない」では済まされない。はっきり言って、現状の輸出主導の成長戦略に固執する限り、日本経済の先行きは真っ暗だ。 先日のブログでは、折からの消費税導入の話題に絡め、莫大な借金地獄に陥った日本の財政構造について論じた。そもそもこの馬鹿みたいな借金財政は、93年の日米包括経済協議で米国が日本の市場開放と公共投資を要求、ときの海部内閣がこの内政干渉まがいの強要に唯々諾々と従って10年間に430兆円という途方もない公共事業を確約、さらに村山内閣がこれになんと200兆円を上積みし、国債という借金を乱発しながら、この狭い国土を鉄とコンクリートで埋め尽くす勢いで土建屋公共事業を狂乱的に展開したのが始まりだ。 当時の米国の言い分、日米間の貿易不均衡つまり日本企業が米国に集中豪雨的な輸出攻勢を掛けるのは日本の国内市場が狭いから…とまあ、ここまではそこそこ理屈の通らない話でもないのだが、これを克服するための内需拡大策が、まあ双方「あうんの呼吸」というか、勘定書を国民にツケで回す借金漬け公共投資という、日米の独占企業に美味しい選択で落ち着いたという浅ましい話なのだ。 かくして、歴代政府と財界の合作により世界最悪の借金財政は意図して作られ、それをまた今度は社会福祉切り捨てや消費税増税の理由に使うという、このどこまでも恥知らずな論理。「こんな借金を孫子に残すわけにはいかんから消費税増税もしゃあないか」などと、善良…にして知的怠慢にあぐらをいた(…と敢えて言わせてもらう)国民の皆さんに対しては、まずこのプロパガンダを真正面から切り捨てて見せることが出発だが、ではこの借金地獄を脱出しつつ日本経済を成長させる道を示せるか。 ポイントは三つある。まず第一には取るべき所からきちんと取ること。例えば、労働分配を減らし法人税を値切って大企業がひねり出した利益は、景気が冷え込んで設備投資に向かいようがない今、一部がヘッジファンドなんて外人投資家への配当として流出するほかは、史上空前の内部留保となって死蔵されているのが実態だ。国民経済的にはそんなカネは国がさっさと巻き上げて、社会保障や労働給付など所得再配分に使う方がよほど内需を刺激し景気は良くなる。第二はもちろん、いらん金は使わんこと。例えば在日米軍への思いやり予算なんて、クソの役にも立たない軍事費は直ちに全額カットだ。 第三に、これが将来に向けて最も重要なのだが、日本経済の成長戦略を描きそれに基づく国家的な経済再編を断行すること。はっきり言うと、滅びゆく産業は早期に転換させるか安楽死させ、次代を担う産業にヒト・モノ・カネの国家的経営資源を集中投入してそれを急速に育てることだ。日本の歴代政権の政策はここで決定的に誤っている。 近い将来、低炭素社会の到来は避けられない。さもなくば人類は破滅の縁に追い詰められかねないからだ。さらに化石燃料などの地下資源がまもなく底をつくという事情もある。従って、化石燃料やウランに依拠した発電は早晩まちがいなく自然エネルギーに取って代わられるだろう。これに加え産業の盛衰は歴史の必然だ。かつて産業革命のリーディング産業であった繊維など軽工業の産地が先進国から途上国に移転していったように、鉄鋼など素材産業も途上国に拠点が移ってゆくことも避けられない。 にもかかわらず、これらの滅びゆく産業群が日本の産業界を支配し、ひいては政権に大きな影響力を持ち続けている。ここに日本の政治経済のアンシャンレジームがあるのだ。歴史の必然を正確に見定め、日本経済の成長戦略を描くとすれば、それは低炭素社会建設に繋がる一連の産業連関を育成することと、言葉だけでなく「モノからヒト」、つまり工業社会からサービス社会へ、具体的には社会福祉や教育、コミュニケーションなど、人間中心のソフト社会建設へ経済全体をシフトすることだ。 このように政策と財政を活用してはじめて、「カネは天下の回り物」となり人々の幸せの役に立つ。よく知られていることだが、経済の語源は「経世済民」にあり、つまりその使命は「国を治め民を救う」ことにある。「格差があって何が悪い」と叫んだコイズミなどに経済も政治も語る資格はもとよりなかったわけだが、消費税増税で血迷うカンも期待できそうにはない。誰か、本当の成長戦略を示してこの国の経済を持続可能な方向に立て直せる政治の担い手はいないのか。 ←ランキングに参加してます、ワンクリックでご協力を