●エネルギー白書にみるトリックの構造●
先々週から先週始めまではなんというかエアポケットに入ったように珍しく時間に余裕ができて、ブログの更新も頻繁にできたのだが、またなにかと気忙しくなってきた。明日明後日と出張だし、このままではまた冬眠状態になる恐れが… ということで、主な論点はこのブログ6月16日付に書いた内容の焼き直しになっちゃうのですが。 とりあえず「わかやま環境ネットワーク」の機関紙に書いたコラムを以下に転載です。 (以下転載) エネルギー白書に見るトリックの構造 昨年8月末の政権交代で誕生した鳩山首相は、就任直後に出席した国連の会議で高らかに温暖化ガス25%削減の中期目標を発表、世界から大喝采を浴びたが「今は昔」だ。鳩山さんはもうその地位にはなく、喝采を浴びた鳩山ビジョンを国内対策で裏付ける「地球温暖化対策基本法案」は国会閉会で6月16日、あえなく廃案となった。 その前日の15日にはエネルギー白書が閣議決定されている。「エネルギー権益確保」と称し、途上国の動きに警鐘を乱打して油田の囲い込みや原発推進を説く一方、再生可能エネルギーの普及については、「首位ドイツの9%、フランス・イタリア・スペインの7%に次ぎ日本は6%で、主要各国に比べ遜色ない」とさりげなく記述している。 ん~?なのだ。経団連の宣伝に騙されている人はたしかに多いが、地球温暖化問題をある程度学んだ者にとり、日本の再生可能エネルギー普及状況が先進国中最低クラスというのは一般常識の部類だ。いったいどんな手品でこんな数値をたたき出したのか? …と思って早速調べてみた結論は、「やはり...」と、腹が立つやら呆れるやら。 予想した通り日本の「6%」の正体、約3.6%が大型水力、同0.6%がゴミ発電や熱利用だった。太陽光や風力など今温暖化対策の文脈で普通にいう再生可能エネルギーは残る1.8%に過ぎない。同じ計算でドイツの場合は9%のうち大型水力など1.3%を引いても7.7%が残り、この4分の1にも満たない日本の後進ぶりが浮き彫りになる。 「大型水力発電も温暖化ガス削減に貢献するのでは?」とのご意見があるかもしれない。さよう貢献する。ということで大型水力を勘定に入れるなら、電気の全てを水力で得ているパラグアイやノルウエー、7割のブラジルや6割のカナダがなぜ「うまい具合」に比較対象の国から外れているのか。電気の100%が地熱のアイスランドなんてのもあるぞ。 白書の記述は意図して「日本は再生可能エネルギー先進国」との誤解を広げ、原発と石炭火力に固執する現状を肯定させる巧妙な世論操作にほかならない。ウソというわけではないが、データを姑息に恣意的に組み合わせて国民を欺くトリックなのだ。こんなのに国費が使われて事業仕分けもされず、閣議はすんなり通り、メディアは何も言わない。 要するにこれは、鳩山前首相の25%宣言に驚いた経済界とその意向を受けた官僚組織の反撃なのだろう。彼らは旧世界の利権を失うことを恐れる余り、低炭素革命後の新しい世界が見えていない。彼らの目を覚まさせる論理と強さを、市民は持たねばならない。(以上転載) 次は、いま選挙の争点に急浮上の消費税について、トヨタやキャノンはびた一文納税していないってトンでもない話を書きたいのですけど、いつ時間ができるか… ではまたです。 ←ランキングに参加してます。ワンクリックご協力を。