●国松長官狙撃事件時効・警視庁公安部異例の捜査総括文書の真意●
地下鉄サリン事件など、数々のテロで世間を震撼させたオウム真理教の後継宗教組織アレフは今日31日、警視庁公安部が前日の30日に時効を迎えて迷宮入りした国松警察庁長官(当時)狙撃事件について、「オウム教団のテロ」と断定する異例の捜査総括文書を発表したことに対し、内容証明着き郵便で厳重な抗議を申し入れた。同文書は警視庁ホームページにも全文が掲載されており、この削除も要求。もし、これが容れられない場合は提訴も辞さないとしている。 オウムやアレフの思想や行動を支持する気はもちろん毛頭ないが、この件に限ってはアレフ側の言い分が全面的に正しい。警視庁公安部のやってることは無茶苦茶だ。オウム教団やそれに属する人物を容疑者として特定するだけの明確な証拠を固められなかったからこその時効だろう。警視庁公安部はその親分がクビを取られそうになるとんでもない事件を受け、そのメンツを賭けて捜査に当たったのだが、見るも無惨な敗北にまみれた。刑事警察の捜査能力の低下が懸念されて久しいが、公安の方はもっともっとダメで、陰険な尾行や監視はできても捜査機関としては使い物にならないことが明らかになった。 この前代未聞の失態を反省し、原因を掘り下げて今後の教訓とするのがオトナの処し方というモノだと思うが、悔しさの余りというべきか、公安は推定だけで容疑者を断定する文書を発表した。状況証拠だけで犯人扱いされてはたまらない。ん~、少し前に21世紀枠で出場した高校にあえなく敗れて、「末代までの恥」とか「腹を切って死にたい」とか、教師にあるまじき血迷い言を繰り返した島根県のどこかの高校野球部監督を思い出させる醜態ではないか。こんなことが通るなら、推定無罪の原則などきれいサッパリ吹っ飛ぶぞ。さすがに多くの識者がこの暴挙を厳しく批判している。 その前日、29日には、03年11月の衆議院選前に共産党の機関紙などを配布したとして国家公務員法違反に問われていた社会保険庁の職員が、東京高裁で一審の有罪を覆す無罪判決を勝ち取った。検察が主張する違法行為は、休日に職場と関係のない自宅周囲で共産党のビラを配布したこと。ん?、日本は北朝鮮を警察国家と笑えるのか。公務員の地位を利用して政治的な働きかけをしたというならまだしも、仕事とまったく無関係で私的な時間と空間でも、自分の意見を述べられないような国に思想や言論の自由があると言えるのか。こんなもんを罪に問うこと自体がナンセンス、無罪は当たり前だ。 が、驚くのはこの実にしょうもない容疑を固めるのに警視庁公安部はのべ171人もの警官を動員、一ヶ月にわたりこの社保庁職員を尾行し、その私生活を微に入り細にわたって監視し33本のビデオに撮影していたことだ。憲法もプライバシーもくそもない。いったい何の権利があってこんなことができるのか。しかも、このコストはすべて国民の税金から出ている。 でまあ、こんなことに人とカネをつぎ込み血道を上げている一方で、自分たちの親分の命が狙われた事件は、刑事ドラマなら必ず出てくる地取り捜査もおろそかにして迷宮入りにしてしまったわけだ。文字通り税金ドロボーの図ではないか。重大な人権被害を受けた社保庁職員はもちろんだが、国民はすべて税金を無駄遣いするこんな公安警察から、国民の権利侵害に使った無駄金の返還を要求する権利がある。 公安警察とは要するに、国家権力のもっとも凶悪な暴力装置として、小林多喜二ら時の権力に楯突く人々を捕らえ拷問リンチで殺してきた特高警察の後継組織だ。かつての日本ファシズムの亡霊というか、こんな物騒で汚らわしい思想警察は民主主義とは絶対に両立しない。従って一刻も早く解体すべきであり、昨今はまあ「聖域なき」リストラ行革の影響もあって、そろそろやめちゃうか…って気運が政府内でも高まっていたのだが、オウムが暴れたおかげで組織解体を免れた経緯がある。そういう意味では、オウム真理教と麻原教組は公安警察の恩人みたいなものだ。 …等とつらつら考えてみると、今回の異例の総括文書の真意というか背景もぼんやり読めてくる。要するに連中は、オウム真理教の危なさを世間にもう一度訴えることで、公安警察組織の延命を図りたかったのではないのか。…ホント、とことん迷惑で気持ちの悪い組織だ。早く消滅させるにしくはない。民主党が、本気で仕分けするならまず公安警察からではないのか。 ←ランキングに参加してます。ワンクリックご協力を。