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カテゴリ:環境
千葉で開かれていた「グレンイーグルズG20ダイアローグ」が昨日、閉幕した。この会合で議長国である日本の政府代表は予想通り「セクター別アプローチ」を提案、これまた予想通りなのだが、これに全面的な支持を与えたのは米国のみで、他の先進国、途上国に加え世界のNGOからも厳しい批判を浴びた。 不肖コジローあえて断言するが、セクター別アプローチに今後も固執する限り日本は間違いなく世界から取り残される。日本政府は今月31日から4月4日までバンコクで開かれる気候変動枠組み条約関係の作業部会でも同様の主張を展開する考えのようだが、とすれば今回同様世界からのブーイングは避けられない。日本政府がマジで洞爺湖サミットにおけるリーダーシップをめざすのなら、京都議定書型の国別温室効果ガス総量削減の路線に一刻も早く復帰し、自ら大胆な中期削減目標(一般には2020年がターゲット)を掲げることだ。 さて、このように批判するからには、その「セクター別アプローチ」なるものについても、きちんと書いておく必要があるだろう。ごく簡単に言えば、業種や分野(セクター)ごとに効率を向上させて達成しうる潜在的削減可能量を計算し、それを積み上げて国別の総量目標を決める方法論だ。日本政府は、発電や製鉄、セメント、運輸など8分野を「考えられる対象」として例示、製品1トンあたり、輸送量・距離あたりなどでCO2排出量の効率指標をセクターごとに設定し、これを基に削減可能量を算出して国別目標を決めるとしている。 で、考えればすぐに分かることだが、このアプローチでは温室効果ガス排出の総量はなんら規制されない。例えば、鉄鋼の1トンあたりのCO2換算生産効率を20%向上させても、鉄鋼生産の総量が20%以上増えれば排出される温室効果ガスは増える。一方、いま地球環境を危機に陥れている原因は、人類が排出する温室効果ガスの総量が地球環境の自然吸収力に倍する結果、吸収しきれず大気中に増え続ける温室効果ガスが、刻一刻人類の未来を破局に追い詰めつつあるという現実なのだ。 途上国の恐ろしく効率の悪い生産施設を先進的な技術で更新するなど、工業各分野の生産効率向上策はもちろん重要だが、効率を上げても温暖化ガス排出の総量が減らなければ地球温暖化は止まらない。つまり、セクター別アプローチは、世界でもトップクラスの生産効率が自慢(最近の実態は実は看板ほどではないのだが・・・)の日本経団連には都合のいい手法だが、IPCCが示した科学的成果を無視した非科学的な提案であり、日米と心中したくない世界が反発するのは当然といえる。 破局的な温暖化の回避へ、人類に残された時間は短い。この際、はっきり言わせてもらうが、地球と人類の運命より金儲けが大事という御手洗経団連のゴキゲンを伺い、しょうもない提案などして時間を浪費している場合ではないのだ。この国の政治は経済の奴隷なのか。福田サンの決断力が問われていると思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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>効率を上げても温暖化ガス排出の総量が減らなければ地球温暖化は止まらない。
いいえ、人為的な二酸化炭素の排出増が継続しようとも、地球は今後寒冷化すると思います。 http://jp.rian.ru/analytics/science/20070929/81612001.html (2008年03月17日 10時58分13秒)
スパイラルドラゴンさん
>>効率を上げても温暖化ガス排出の総量が減らなければ地球温暖化は止まらない。 > >いいえ、人為的な二酸化炭素の排出増が継続しようとも、地球は今後寒冷化すると思います。 http://jp.rian.ru/analytics/science/20070929/81612001.html ----- コメントありがとうございます。 せっかくのご紹介ですのでロシアの科学者とおぼしき方(肩書きでは気象学者ではないようです)の短い論評を読ませていただきましたが、これまでに私が接してきた多くの温暖化懐疑論の寄せ集めといった印象で、初めて見るような論点はありませんでした。 過去には、このブログでこうした懐疑論につきあっていたこともあるのですが(過去記事参照)、最近は温暖化阻止の活動がチョー忙しく、とてもそんな悠長な時間が取れませんので、あしからず。m(_ _)m で、この際ついでですが、私が知る範囲では、以下のサイトが最も冷静かつ科学的にわかりやすく、懐疑論が取り上げる個々の論点について解説をしてくれています。いずれも物理学の初歩に属する知見ですが、温暖化を論じる上では常識の部類だと思います。科学的真実に到達するために議論は有効だと思いますが、少なくともこの程度の科学的知見は踏まえた上で論評してもらわないと…と思います →http://www.people.fas.harvard.edu/~ise/ (2008年03月17日 14時32分04秒)
こんにちは。私は過去の地政学的歴史観から抜け出さないことには、環境問題を根本的に解消することは出来ないと思っています。本当に解決するなら、今までのパラダイムは捨て去る必要があると思います。私のブログでは、海洋資源に着目しつつも持続可能な経済を実現して、その延長線上に人類の平和をもたらす「パクスマリーナ」構想という全く新しいパラダイムを提唱しています。是非ご覧になって下さい。
http://yutakarlson.blogspot.com/2008/03/blog-post_4047.html (2008年03月17日 15時19分06秒)
難しい議論は分かりませんが、私たちは周りの人に、チーム6%に参加の呼びかけをしています。どんなことも他人事ではなく、自分に密接に関係していると意識して自分の生活の中で出来ることを取り入れようとしています。みんなのそして未来の人たちの地球ですもの。
(2008年03月17日 19時54分41秒)
yutakarlsonさん
>こんにちは。私は過去の地政学的歴史観から抜け出さないことには、環境問題を根本的に解消することは出来ないと思っています。本当に解決するなら、今までのパラダイムは捨て去る必要があると思います。私のブログでは、海洋資源に着目しつつも持続可能な経済を実現して、その延長線上に人類の平和をもたらす「パクスマリーナ」構想という全く新しいパラダイムを提唱しています。是非ご覧になって下さい。 >http://yutakarlson.blogspot.com/2008/03/blog-post_4047.html ----- ご訪問、ありがとうございます。 以前にも同趣旨のご意見を頂いておりましたね。レスが遅れまして申し訳ありません。 現代の危機を超克するには、小手先の修正や改革でなくパラダイム転換が必要とのご意見は同感です。地球温暖化による破局を防ぐためには、最終的にはこれを生み出した経済の暴走、つまり利潤目的の生産という資本主義のパラダイムを転換する必要があり、これによって生み出される新しい世界の基本的な形は、エネルギーと食料の地域自給ではないかと考えています。こうした観点から見ても、確かに海洋は大きな可能性を秘めていますね。 (2008年03月17日 23時35分28秒)
青空229さん
>難しい議論は分かりませんが、私たちは周りの人に、チーム6%に参加の呼びかけをしています。どんなことも他人事ではなく、自分に密接に関係していると意識して自分の生活の中で出来ることを取り入れようとしています。みんなのそして未来の人たちの地球ですもの。 ----- いつもありがとうございます。 環境問題は大きすぎて足がすくみそうですが、できるところから始めてゆくことが本当に大事だと思います。 これを「Think Grovally Act Locally」(地球規模で考え足下から行動を起こそう)なんてスローガンで勧めているわけですが、「Think Future Act Now!」(未来を考え、今行動を!)も、もちろん重要な行動倫理です。未来世代への責任を考える青空さんの慧眼に敬意を表します。 (2008年03月17日 23時42分49秒) |