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カテゴリ:環境
例によって自転車操業の日々が続き、コkメントする余裕がなかったのだが、3月17日、主要全国紙の朝刊に一面全段買い切りの意見広告が一斉に掲載された。タイトルは「考えてみませんか?私たちみんなの負担額」。スポンサーは日本鉄鋼連盟や電気事業連合会など58の業界団体、…ということは、早い話が経団連だ。 詳しく紹介する余裕はないが、要するに日本はすでに世界トップレベルの低炭素社会になっており、これからさらにCO2を削減するには莫大なコストが必要になる。例えばエネルギー起源のCO2排出を1990年比でたった3%削減するだけでも52兆円、一世帯当たりにして105万円の負担になる…と脅しをかけて、それでもあんた、マジでやりますか? というのがこの意見広告のココロだ。 言いたいことは山ほどあるが、非常にあざといトリックが駆使されている点を指摘しておこう。まず第一に、たった3%…というが、この計算の基準となっている2005年のエネルギー起源CO2の排出量は90年比10%の増加になっており、この時点からは実質13%の削減になる。105万円はこれに必要なコストだから1%あたりは約8万円ということになるのだが、3%で105万円!と書けば、多くの読者は1%あたり35万円!と誤解する仕掛けになっている。 次いで、この90年比3%削減という数値は、京都議定書で日本が約束した90年比6%削減の目標達成を連想させるために持ち出したのだろうが、京都議定書の目標は08年から12年までの5年間で達成することになっている。つまり年々の負担は105万円の5分の1で21万円ということだ。まだ期日には年単位の余裕があるのに、明日にでもすぐに105万円耳をそろえて…なんて、お金のことにうとい老人を手玉に取る各種詐欺にも似て、悪徳サラ金も赤面するペテンの論理ではないか。 ついでながら、政府が示す京都議定書の目標達成計画は、6%の削減目標のうち森林吸収源対策と排出量取引などいわゆる京都メカニズムで5.5%を確保することとしており、純粋の排出量削減は0.5%にすぎず、さらにエネルギー起源CO2については2%の増も容認する志の低いものだ。もちろん、削減量は大きい方がいいのだが、意見広告が挙げた「エネルギー起源CO2で3%削減」という数値は、対策の困難さを国民に誇張するために、あえて出した臭いが濃厚にする。 さて第3、CO2の排出を13%も減らすことができれば、まずその分は確実に化石燃料の消費が減るわけでそれだけ燃料費も安くなる理屈だ。かくして、当然ながらコストは収支差し引きで計算すべきだが、これが105万円也の勘定にはまったく入っていない。ご存じの通り電気事業連合会傘下の電力各社は、「オール電化は先行投資を回収できるから差し引きおトク」なんてしゃかりきに売り込んでいる。それがこの絵に描いたような二枚舌だ。恥ずかしくはないのか。 最後に疑問をひとつ。52兆円(という計算の論拠自体、精査する必要があるが)を4900万世帯でわり算して105万円って、なんで一世帯当たりなん? これって、大金持ちの経団連各社は一銭も負担せず、ぜんぶ貧しい国民に転嫁するって論理だよね。ということで、相変わらず、徹頭徹尾厚かましいのだ、経団連は。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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