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カテゴリ:環境
メキシコ・カンクンで開かれていた国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議=COP16は終わった。採択されたカンクン合意と称する決議の概要は、共同通信の配信によれば次の9項目に整理されている。ただし以下は、コジローが基本的な内容と考える順番に入れ替え、このブログの叙述の都合で勝手に番号を打っている。 (1)産業革命以降の気温の上昇を2度未満に抑えるため、締約国は緊急に行動する。 (2)世界全体の排出量ができるだけ早く減少に転じるよう締約国は協力する。 (3)地球温暖化の被害を限定的なものにするためには、20年までに先進国全体で温室効果ガス排出量を1990年比で25~40%削減しなければならないことを認識し、先進国に削減目標の数値を上げるよう促す。 (4)途上国は全体で、20年に排出総量の伸びを抑制することを目指す。 (5)途上国の温室効果ガス削減を検証する仕組みをつくる。 (6)京都議定書の第1約束期間と2013年以降の第2約束期間の間に空白ができないよう、作業部会はできる限り早く作業の完了と採択を目指す。 (7)京都議定書の第2約束期間の基準年は90年とする。 (8)50年までの世界全体の削減目標を第17回締約国会議で検討する。 (9)発展途上国の温室効果ガス削減策を支援する「グリーン気候基金」や、温暖化の影響への対応を手助けする「カンクン適応フレームワーク(枠組み)」を設立する。 (1)から(5)まではIPCC(気候変動に関する政府間パネル)に代表される科学の見地が、決定的な破局を避けるために示した地球温暖化対策の要点について、世界の政治が一致してその合理性と必要性を認めたことを意味する。 温暖化による気温上昇を2度未満に抑制、温暖化ガスの排出を現在の増勢から減勢に反転(ピークアウト)、先進国は20年までに90年比25~40%削減、途上国も20年までに成り行き任せ(BaUと表記する)から排出抑制・・・ いずれも最も基本的な事柄であり、例えばピークアウトの目標年次が明記されないなど不満は残るものの、世界がこうした点に合意した意義は小さくない。昨年のCOP15ではこんな基本的な見地のただひとつですらも、合意に至ることはできなかったのだ。 さらに(6)(7)、第2約束期間を設けることで一致したということは、実質的に京都議定書の枠組を2013年以後も引き継ぐことで世界が合意したことを意味する。COP16の結果について、マスコミは一斉に重要決定を先送りと報じており、確かにそうともいえるのだが、元々カンクンで包括的な合意が成立する見込みはなかった。先送りは開会前から織り込み済みだったのであって、日本などの執拗な妨害にもかかわらず、京都議定書の枠組維持が確認されたことは予想以上の成果と評していい。 では、日本はなぜ大嫌いな京都議定書が生き残るカンクン合意に賛成したのか。実は、共同配信にはなかったが、毎日新聞はカンクン合意の中に、「議定書締約国には13年以降の削減目標に同意しなくてよい権利がある」との記述があると報じている。つまり、京都議定書の第2約束期間が始まっても、削減目標の割り当てを拒否する権利を認めたわけだ。さもありなん、日本は「名を捨てて実を取る」といえば格好よさそうだが、世界が苦労して練り上げてきた合意に同調する条件として、削減義務不履行の権利をおおっぴらに要求し勝ち取ったわけだ。途上国やNGOのブーイングもむべなるかなである。といった次第であるから、先にこのブログで書いたように「カンクン」で「菅君」は揶揄の対象にしかならなかった。 ま、そうした事情はあるとしても、国連気候変動枠組条約を土台にした交渉舞台の崩壊さえ懸念されたCOP15の結果から見れば、カンクンでこうした合意に世界が歩み寄った意義は計り知れない。刻々と差し迫る危機を前に、世界はとにもかくにも再び粘り強く困難な交渉のテーブルにつき、可能な合意を積み重ねることでその舞台装置を守り抜いたのだ。COP17で世界が足並みを揃えるまでの道のりは相変わらず険しい。だが、そうしたなかで一筋の光明も見えたのがカンクンの一連の経過だった。ますます、日本政府の言動を変えさせる日本の市民運動の力量が問われる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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