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佐遊李葉  -さゆりば-

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2013年10月26日
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カテゴリ:遠き波音
 その日の夕方、多聞丸はまた木戸をくぐって、隣家へ行ってみた。

 吉祥に会いたくもあり、会いたくもない気がした。だが、心の中にわだかまりがあり、それがひどく痛んでならないのだ。

 誰かに今朝見たことを話せば、今のこの苛々が治まるかも。

 多聞丸は腹立ち紛れに、隣家の庭の隅に咲いていた白梅を一枝折り取り、それを振り回しながら寝殿の方へ行ってみた。誰かいないかと裏手に廻ってみると、果たして老尼が一人、西日の当たる簀子の上で縫い物をしているのに出会った。

 この老尼は、吉祥の乳母の姉なのだと聞いている。三年ほど前に、妹を頼ってこの屋敷にやってきたのだ。夫と死に別れた後、一人娘も近江の郡司の妻となって京を去ったため、仕方なく妹の厄介になっているのだという。

 吉祥の乳母は昨年病を得て亡くなったが、身寄りのない老尼を哀れんだ中務大輔から、寝殿の北面に新たに曹司をもらって住み着いていた。多聞丸が近づくと、老尼は針を動かしながら微笑んで言った。

「これは若君。吉祥様にお祝いを申し上げに来てくださったのですね。綺麗なお花ですこと。吉祥様もさぞやお喜びになられましょう」

 多聞丸が手に持っていた梅の枝を、老尼は吉祥への何かの祝いの贈り物だと勘違いしたらしい。多聞丸が訳もわからず何となく頷くと、老尼は嬉しそうな声で続けた。

「ほんに、ようございました。吉祥様がようやく婿君を迎えられて、中務大輔様も安堵なされたでしょう」

「婿?」

「ええ、こちらのお屋敷はあまり裕福ではございませんからね。十分なお世話もできない家の婿になど、誰だってなりたがりませぬ。それなのに、吉祥ほどの娘をつまらぬ男なぞにやれるかと、中務大輔様がいつも言い張られて。吉祥様の方も、童女の頃からそう言われてきたせいでしょうか。誇りばかり高くなられて生半なお相手では承知なさらないので、北の方は大そう苦労しておいででしたよ。でも、お宅の父君様がご紹介くだされたあの兵衛佐様ならば、中務大輔様も異存はござりますまい」


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↓福岡藩黒田家の別邸である友泉亭に咲いていた、一輪の白梅の花。この庭園は、息子の幼稚園のすぐ近くにあるんで、時々暇つぶしに行ってます。平日ならほとんど他にお客さんのいない(汗)私の憩いのスペースです。

  • CIMG3037.JPG






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最終更新日  2013年10月26日 15時41分52秒
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