今年を振り返って
今年は全部で101の舞台や映画を観ました。本を書く時間をつくったり、後半は親族の入院があってチケットをとっても観られなかったり、いろいろあって思ったより少なかったです。ふり返って一番何が印象に残ったかと言われたら、私は嶋大夫の「岡崎」(伊賀越道中双六)の義太夫節を挙げたい。浄瑠璃って、こんなに自由自在なロックだったと思い知らされた。年の瀬に見た玉三郎のおかるも衝撃的だった。仮名手本忠臣蔵は、何百年も演じられているけれど、役者が自分なりの魂こめることで、いつも新鮮で、古びることがない。そんな歌舞伎の真髄に触れた気がした。「鉈切丸」での森田剛も忘れがたい。忘れがたいといえば、「盲導犬」の木場勝己も忘れがたい。バレエでは、Kバレエユースの第一回公演。若いダンサーたちが、熊川のDNAを受け継いでくれていると思うとうれしい。映画は数が少なくてMVPを選ぶのもおこがましいが、私は圧倒的に「風立ちぬ」を評価したい。悲痛なまでの個人主義映画。「創造的十年」は私の座右の銘になりそうだ。いいことも悪いことも、自分のやったことに覚悟と責任をもち、それでもとにかく、生きていく。Le vent se leve. Il faut tener de vivre, なのである。個人の自由が急激に狭まろうとしている今、宮崎駿が「風立ちぬ」にこめた意味を噛みしめる。風が吹こうが、槍が降ろうが、私たちは生きていくのである。力の限り、自分らしく。2014年、日本人から自由が奪われませんように。