|
カテゴリ: X'mas企画 サンタクさんの贈り物
12月に入っても、奥さんの様子は良くならなかった。奥さんは、つわりがひどくて食欲がほとんどない。だるいのか、ぐったりと横になっていることが多い。子どもの世話どころではない感じだ。それでも奥さんは、大樹の様子が気になるらしく、起きてきてはソファーに座り、リンホンと遊ぶ大樹をうつろな目で見ている。 奥さんの両親はすでに他界しているそうだ。兄弟もいないので、日本に帰っても頼るものがいない。子どもができると出産に実家のある日本まで帰る奥さんも多い中、理沙子奥さんはこのままQ市で出産するらしい。 リンホンは奥さんが気の毒でならない。もし私の具合が悪くなったら助けてくれる家族はいる。父の稼ぐ給料は王さんのところの犬の餌代にもならないけれど、きっと畑で取れた一番のものを私のために持ってきてくれる。母は、ご飯が食べられなくなった私に、好物の餅(ピン)を作ってくれるだろう。祖母は、役に立たなくてごめんねと、ほとんど見えない目に涙を浮かべつつ、おなかをさすってくれるだろう。姉だって叔母だって、自分の都合を無理して、何かと世話を焼いてくれるはずだ。 リンホンは思った。リッキーの一件以来、自分の恵まれなさを思うとつらくなるので考えないようにしていたが、自分にも、恵まれている面はある。今は離れているが、大事な家族があるではないか。 最近の奥さんは、本当に食欲がない。以前は料理好きだった奥さんだが、最近の夕食は、ご主人の手を借りたり、外食を利用している。しかし、奥さん自身はろくに食べていないようだ。昼に関しては大樹の食べるものをリンホンにまかせっきりで、自分は果物をつまむ程度だ。リンホンは、Q市に来てから覚えた、スパゲティーと、サンドイッチにうどん、それから奥さんがやるのをまねて適当に作ったチャーハンの4種類をぐるぐる回して作っては、大樹に食べさせる。 奥さんのおなかには赤ちゃんがいるというのに、このままで大丈夫なのだろうか? リンホンは考えた。日本料理なら何か口に合ううものがあるのではないか。私が、奥さんに作ってあげることはできるだろうか?思いあぐねたリンホンは、同じ棟に住む中村家のお手伝いに事情を話して、日本料理を一つ二つ教えてもらった。中村家は、男の子が三人いる。奥さんも色々忙しいようで、週に2回は、家政婦に教え込んだ日本料理を料理を作らせている。
その日、リンホンが作ったおにぎりと味噌汁と鳥の照り焼きの昼食を見て、理沙子奥さんは目を丸くした。
良い子にだけ来る?みんなに来る?
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ X'mas企画 サンタクさんの贈り物] カテゴリの最新記事
|