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 小説ブログ 「GO!GO!花園」

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ようこそおいでくださいました。Madam Garden こと花園夫人です!

オムニバス短編小説で、駐在員団地のばたばたな日常を書いてます。

この物語はフィクションであり、実在する企業、団体、人物などとは関係ありません。C国は架空の日本の隣国…っていうか明らかに中国ですね。でも、Q市はあくまで架空の一都市です。登場人物も特定の個人をモデルとするものではなく、すべて作者の想像上の産物です。

作者の注意散漫なうっかり体質による読み苦しい間違いも多々あるかと思います。広い心で付き合ってください。

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2010年12月24日
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******* X'mas 企画 15 days of Christmas in 花園 ********



サンタクさんの贈り物  第14夜 サンタクさん


「あのね、リンホン、まだ人にはあんまり言ってないんだけど、実は赤ちゃんができたみたいなの。だから体調が悪いのよ。まだほかの人には言わないで。大樹にもまだ言ってないから、内緒にしておいてね。」

理沙子奥さんはリンホンにそう告げた。リンホンは安心した。10月の休暇を境に人が変わったように元気がなくなってしまった奥さんが、病気ではないとわかったからだ。


それから一月半、リンホンは大樹の世話をするきかいが増え、。大樹といっそう仲良しになった。大樹はここしばらく、日本の岡山というところに住む父方のおばあちゃんが送ってきたクリスマスの絵本に夢中だ。赤い服を着た聖誕老人の話をめくっては、なにやらぶつぶつ言っている。リンホンに片言のC国語でお話をしてくれることもある。大樹のおもちゃで遊ぶうち、ひらがなを覚えてしまったリンホンだが、本に書いてある文字をつなげて読めても意味はわからない。


「あのね、サンタクさんはね、クリスマスになるとおもちゃを持ってきてくれるんだよ。いい子にだけくれるんだよ。」


サンタクさんというのが日本語で聖誕老人の事らしい。


「来るかな、サンタクさん。僕のところにも来るかなあ?」


「来るよ。サンタクさん。だって、大樹は、いい子。大樹は好孩子ね。」

「ふふふ。」

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12月に入っても、奥さんの様子は良くならなかった。奥さんは、つわりがひどくて食欲がほとんどない。だるいのか、ぐったりと横になっていることが多い。子どもの世話どころではない感じだ。それでも奥さんは、大樹の様子が気になるらしく、起きてきてはソファーに座り、リンホンと遊ぶ大樹をうつろな目で見ている。

奥さんの両親はすでに他界しているそうだ。兄弟もいないので、日本に帰っても頼るものがいない。子どもができると出産に実家のある日本まで帰る奥さんも多い中、理沙子奥さんはこのままQ市で出産するらしい。

リンホンは奥さんが気の毒でならない。もし私の具合が悪くなったら助けてくれる家族はいる。父の稼ぐ給料は王さんのところの犬の餌代にもならないけれど、きっと畑で取れた一番のものを私のために持ってきてくれる。母は、ご飯が食べられなくなった私に、好物の餅(ピン)を作ってくれるだろう。祖母は、役に立たなくてごめんねと、ほとんど見えない目に涙を浮かべつつ、おなかをさすってくれるだろう。姉だって叔母だって、自分の都合を無理して、何かと世話を焼いてくれるはずだ。

リンホンは思った。リッキーの一件以来、自分の恵まれなさを思うとつらくなるので考えないようにしていたが、自分にも、恵まれている面はある。今は離れているが、大事な家族があるではないか。



最近の奥さんは、本当に食欲がない。以前は料理好きだった奥さんだが、最近の夕食は、ご主人の手を借りたり、外食を利用している。しかし、奥さん自身はろくに食べていないようだ。昼に関しては大樹の食べるものをリンホンにまかせっきりで、自分は果物をつまむ程度だ。リンホンは、Q市に来てから覚えた、スパゲティーと、サンドイッチにうどん、それから奥さんがやるのをまねて適当に作ったチャーハンの4種類をぐるぐる回して作っては、大樹に食べさせる。


奥さんのおなかには赤ちゃんがいるというのに、このままで大丈夫なのだろうか? リンホンは考えた。日本料理なら何か口に合ううものがあるのではないか。私が、奥さんに作ってあげることはできるだろうか?思いあぐねたリンホンは、同じ棟に住む中村家のお手伝いに事情を話して、日本料理を一つ二つ教えてもらった。中村家は、男の子が三人いる。奥さんも色々忙しいようで、週に2回は、家政婦に教え込んだ日本料理を料理を作らせている。


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その日、リンホンが作ったおにぎりと味噌汁と鳥の照り焼きの昼食を見て、理沙子奥さんは目を丸くした。

「これ、あなたが作ったの?」

「はい、中村さんちのお手伝いに教わって。冷蔵庫のお味噌、勝手に使わせてもらいました。おいしいかわからないけど、食べてみてください。」


恐る恐るといった感じで箸を手に取った奥さんは、結局、奥さんは、おにぎりとみそしるを全部、鳥の照り焼きを半分食べた。あとは申し訳なさそうに残し、ありがとう、ありがとうとリンホンに何度も言った。奥さんがこんなにたくさんの量を食べるのは、いったい何日ぶりだろう。外は寒く、12月の曇り空が重く立ち込めていたが、リンホンは晴れやかな奥さんの笑顔が本当にうれしかった。




(つづく・・・)


明日、 最終回 15夜聖誕快楽!をアップします。
おたのしみに。



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crosby small.jpg良い子にだけ来る?みんなに来る?
      クリスマステーマのお話が盛りだくさん。

  


 






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最終更新日  2010年12月24日 11時27分20秒
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