Lang Lang in Paris
ラン・ランのパリでの録音。二枚組で一枚はショパンのスケルツォ、もう一枚はチャイコフスキーの四季という変わった組み合わせ。抱き合わせすることによって、メーカーは価格を上げることができるし、ユーザーも普段あまり耳にすることのない四季を聞く機会を与えられて、どちらもメリットは大きい。もちろん四季に興味があればの話だ。この組曲の幾つかの曲は知っているが、個人的にはこの組曲をまとまって聞くのは初めてで、とても楽しめた。馴染みのない曲もいい曲が多く、もっと演奏されてもいいと思う。トロイカは子供のころNHKのみんなの歌で歌われていたことを思い出す。ランランの演奏はいつもの個性があまり表に出ることもなく、比較的淡々と演奏されているが、曲の良さが伝わってくる。この中では6月と10月のデリケートな弱音とルバートが絶妙な組み合わせで、思わず「おお!」と声を出してしまった。10月などはシューマンの憂鬱な気分にそっくりで、シューマンの曲といってもおかしくないほどだ。7月と8月のダイナミックな表現も素晴らしい。もちろんいつもの奔放な演奏が聴ける曲もあり、それを聴くと何故か安心してしまう。聴いていると、この曲集がグリーグの抒情曲集と似ていることに気が付いた。こちらは機会音楽なのだがやっつけ仕事ではなく、心を込めて作られているように思う。多分この組曲がこれほどスケールの大きい音楽に聞こえることは初めてではないだろうか。これに対して期待していたショパンは予想外の演奏だった。できが悪いとは言えないのだが、表現が不満だ。とても暴力的な表現が目立ち、なんでそこまで暴力的なのだと思ってしまう。原因は打鍵の強さにある。もともとラン・ランは打鍵が強いピアニストだが、今回は度を越している。第2番の中間部のようなデリケートな表現も聴かれるので、そういうことになった理由が知りたい。それに、フレージングの扱いが粗雑になる部分が見受けられる。ラン・ランの芸を楽しむのならいいかもしれないが、ショパンを楽しむには不向きだ。Lang Lang in Paris(Sony 88875117582)Disc1 Chopin1. Scherzo No. 1 in B Minor, Op. 202. Scherzo No. 2 in B-Flat Minor, Op. 313. Scherzo No.3 in C-Sharp Minor, Op. 394. Scherzo No. 4 in E Major, Op. 54Disc2 Tchaikovsky:The Seasons, Op. 37aI. January: At the FiresideII. February: CarnivalIII. March: Song of the LarkIV. April: SnowdropV. May: Starlit NightsVI. June: BarcarolleVII. July: Song of the ReaperVIII. August: HarvestIX. September: The HuntX. October: Autumn SongXI. November: TroikaXII. December: ChristmasLang Lang(p)Recirded at Salle Liebermann,Opera Bastille,Paris.May 31-June4,2015