Anna Netrebko:Verismo
アンナ・ネトレプコの新譜を聴く。ベリスモ・オペラのアリアを集めたもので、パッパーノ指揮のローマ・サンタ・チェチーリア音楽院管弦楽団が付き合っている。タイトルにそぐわないナンバーも含まれている様に感じるが、それは筆者の感性の問題。一部ナンバーはネトレプコの夫君のユシフ・エイヴァゾフが参加している。全編これでもかとネトレプコの声の威力を見せつけられる。恐れ入りましたとなるところだが、同じ調子でやられると、辟易してしまう。筆者としては、声に頼らない理性的な感情表現が聞きたかったところだ。ネトレプコの声は重く、ロシア式の発声が時々聞かれて、あまり好ましくないが、これはないものねだり。一番の聴きものは、プッチーニのマノンレスコーの第四幕。全曲が収録されていて、パッパーノの熱い音楽と共に、心にずっしりと響いた。ただ、死を描いた悲惨なシーンのはずなのが、全く感じられないのは不満だ。トーランドットの第2幕の「この宮殿に」は原曲通りテノールと合唱が加わって壮大な世界を表現しているが、サウンドが混濁していて、聞きずらい。トスカは肩に力が入りすぎで、聴き手が息苦しくなってしまう。蝶々夫人のアリアも同じ傾向だが、落ち着いた表現で、他の激情型の歌唱に比べると安心して聴ける。「メフィストーフェレ」の「あの夜、海の底に」もいいが、最後は抑制された表現がほしかった。エイヴァゾフの歌はレコード芸術の月評ではぼろくそだったが、個人的にはネトレプコの鈍いサウンドよりは好ましかった。ちょっと鋭すぎるきらいはあるが、イタリアオペラの声として相応しく、とてもアゼルバイジャン出身の歌手とは思えない。パッパーノはマノンレスコーではレガートで処理しているが、音楽の厳しさをスポイルしている気がする。サウンドも肥満気味で惜しい。 ANNA NETREBKO:VERISMO(DGG 479 5015)1.Cilea:Adriana Lecouvreur ACT1"Ecco: respiro appena ... Io son l'umile ancella"2.Giordano:Andrea Chénier Act 3 "La mamma morta"3.Puccini:Madama Butterfly Act 2 "Un bel dì vedremo"4.Puccini:Turandot Act 1 "Signore, ascolta!"5.Leoncavallo:Pagliacci Act 1 "Qual fiamma avea nel guardo! ... Stridono lassù"6.Catalani:La Wally Act 1 "Ebben? Ne andrò lontana"7.Boïto:Mefistofele Act 3 "L'altra notte in fondo al mare"8.Ponchielli:La Gioconda, Op.9 Act 4 "Suicidio! In questi fieri momenti"9.Puccini:Tosca Act 2 "Vissi d'arte, vissi d'amore"10.Puccini:Turandot Act 2 "In questa reggia"11.Puccini:Manon Lescaut Act 2 "In quelle trine morbide"12.Puccini:Manon Lescaut Act 4 "Tutta su me ti posa" "Manon, senti, amor mio" "Sei tu che piangi?" "Sola perduta, abbandonata" "Fra le tue braccia amore"Anna Netrebko(s)Yusif Eyvazov(tn)Orchestra dell'Accademia Nazionale di Santa CeciliaAntonio Pappano(cond)Recorded 7 & 10,June 2015 at Auditorium Parco della Musica,Santa Cecilia Hall