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イギリスの新聞『Daily Mail』紙の日曜版、『Mail on Sunday』の7月15日号を購入したイギリスのファンに、発売前の最新アルバム『Planet Earth』のCDを付録として無料配布するという計画によって、音楽業界を憤慨させている。
このアルバムをイギリスで発売するはずだった英Sony BMG Music Entertainment(UK)社は、この計画を受けて、同国内でのアルバム発売を中止した。蚊帳の外に置かれたイギリスのCD店も怒りを爆発させている。[日本語版注:日本では『プラネット・アース~地球の神秘~』というタイトルで7月25日に発売予定]
イギリスのエンターテインメント小売業協会で共同会長を務めるPaul Quirk氏は「『Artist Formerly Known as Prince』[日本語版注:「かつてPrinceと呼ばれたアーティスト」の意。Princeは一時その名を捨てたため、便宜的にこう呼ばれていた] は、このような行為をしていると、遠からず『かつてレコード店で売られていたアーティスト』(Artist Formerly Available in Record Stores)になってしまうことを自覚すべきだ」と警告する。
Mail on SundayもPrince側も、同紙がアルバムを無料付録につけるために支払った金額を明らかにしていない。しかしPrinceがすでに使用料を受け取っており、同紙の300万人近くにのぼる読者がCDを無料で手に入れることは明らかだ。さらに、ロンドンの『O2 Arena』で行なわれるPrinceの公演のチケット購入者にも、同じCDが無料配布されることになっている。
Princeの新戦略が成功しているのは、このデジタル時代に価値を失いかけているのは楽曲そのものではなく、そのコピーだということを認識しているためでもある。アルバムは、発売から時間がたつほど、友人のCDにせよ、見知らぬ他人の共有フォルダにせよ、リスナーがコピー源を見つける可能性が高くなる。だが、そうしたコピーの価値がどんどん低くなれば、最終的にはオリジナルのみが価値を認められる。PrinceがMail on Sundayに売ったのは、まさにこの「コピーの発信源になる権利」だ。