ところが、クラールの新譜が2月に延期されたことを知り、あわててクラールのアルバムをキャンセルした。
結局手に入れたのはリリースから約3週間遅れになってしまった。
ビルボードで全米第1位になるほどで、日本でも現在ベストセラーになっているらしく、まことに慶賀に堪えない。
半分以上はレディー・ガガのファンが購入しているのだと思うが、別な分野の愛好家がジャズに興味を持ってくれるきっかけになれば、これほどいいことはない。
今回もレディー・ガガのうまさが際立っているが、今回は彼女の歌唱の引き出しの多さと堂々たる歌唱に圧倒された。
前回の共演も衝撃的だったが、今回はそれを遥かに上回っている、というか、懐の深さが1曲では分からなかったというべきか。。。
デラックス版ではデュエットは11曲でソロは3曲ずつという構成。
デュエットは殆んどがテンポの速い曲で占められている。
デュエットでのガガの少し挑戦的アプローチと、それに対抗したベネットの歌唱が火花を散らすような共演となっている。
もちろんベネットに対するリスペクトは十分に感じられるし、何よりもおじいさんと孫のような心の交流が感じられ、聴き手の心も暖かくなるようだ。
その中では表題曲の「チーク・トゥ・チーク」の活きの良さが光っている。
また、「Goody Goody」の二人で会話をしているような趣向もしゃれている。
またミディアム・テンポの「ネイチャー・ボーイ」での冒頭のガガの歌唱も印象的だ。
デュエットだけでなく、ソロも数曲あり、そこでも彼女の歌のうまさが堪能できる。
ジャズ歌手に引けを取らないどころか、ディクションの美しさは他のジャズ歌手からはなかなか聞けないものだ。
声は細身だがキュートで、俗にいう小股の切れ上がった粋な歌唱だ。
普段あまり気に入ることのない「Lush Life」の声の伸びはすごい
高音が突き抜けてくる様は鳥肌もので、これを聞いていたら、ナンシー・ウイルソンのフレージングを思い出してしまった。
若いのになんという上手さだろうか。。。
ただ、気になったのは[e]の発音がきつすぎることだ。
初期のジェーン・モンハイトよりはましだが、少し気になった。
トニー・ベネットは頑張っている。
さすがにガガには負けるにしても、元気いっぱいだ。
高音も出ているし音程もしっかりしているのは88歳という年齢を考えれば驚異的なことだ。
普段からの節制がものをいっているのだろうか。
バックはピアノトリオからビッグバンド、ストリングスまでバラエティに富んでいて、二人を盛り立てている。
何回も聴いていると、ガガは今の路線をやめても、ジャズ畑でも、ショー・ビジネスの世界でも立派に成功すると思ってしまう。
特に、リンカーン・ジャズ・センターでのライブ「Bewitched, Bothered and Bewildered」の自由奔放で度胸の座った歌唱は、その可能性を十分に感じさせる。
なお、デラックス盤はスタンダードに6曲追加されたもので、そのうちの1曲は前回の「Duett ll」で共演した「The Lady Is A Tramp」と同じソース。
Cheek to Cheek Delux Edition(Interscope Records 062537998845 )
1. Anything Goes
2. Cheek To Cheek
3. Don't Wait Too Long
4. I Can't Give You Anything But Love
5. Nature Boy
6. Goody Goody
7. Ev'ry Time We Say Goodbye
8. Firefly
9. I Won't Dance
10. They All Laughed
11. Lush Life
12. Sophisticated Lady
13. Let's Face The Music And Dance
14. But Beautiful
15. It Don't Mean A Thing (If It Ain’t Got That Swing)
16. On A Clear Day (You Can See Forever)
17. Bewitched, Bothered And Bewildered – Live From Jazz At Lincoln Center, New York/2014
18. The Lady Is A Tramp