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カテゴリ:小説/物語
やってきた電車に乗ってもまーちゃんはシクシクと泣いていた。
私はまた何か心無いことを言って彼に大声を出させたくなかったし、何を話しかけていいかも分からなかったので何も話さなかった。 電車の中でも見知らぬ女性がまーちゃんにお菓子をくれた。 世の中というのはなんと温かいものなのかと私は驚いた。 そして感謝した。 また今回ばかりは何とかその女性にお礼を言うことができた。 しばらくするとまーちゃんは泣き疲れたのか眠りだした。 ちょっと助かったような気がした。 しかし同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになってきた。 本当ならこの子は今頃動物園で楽しい時間を過ごしていたはずなのだ。 事実、お弁当を食べるまでは彼は楽しそうに元気にしてくれていた。 それがどうだ! 今はこんなに悲しそうな顔をして、 頬に涙が伝った跡を幾筋も残して、 電車の座席でうなだれたような姿で眠っているではないか。 その姿を見ていると、 もしかしたら、、、 今日この日、彼が一番楽しみにしていたのはゲームセンターでも動物園でもなく、お母さんのお弁当だったのではないか、、、そう思った。 もしそうなら、 私は何という事をしてしまったのか。 いや、そうでなかったとしても、、、 一番親を恋しく思うこの年頃の子供に、 私は何という事をしてしまったのか。 あの頃、 あの冷え切ったチキンハンバーグを食べ続けていたあの頃、 誰かにあのチキンハンバーグを取り上げられて、 「こんなもん」 「食べんでもいい」 「他のもの食べよう」 と言われたら、、、、 私はどうしていただろう。 間違いなくこの子のように泣き叫んで怒っただろう。 しかもあの頃、 だれも私にそんなことをしなかった。 なのに私はこの子にそんなひどいことをしてしまったのだ。 帰りの電車の中で、私はあらためて自分の愚かさを思い知らされた。 そして、 それに引き換え、 世の中のなんと温かいことだろう。 そんなことを考えている間に電車は駅に到着した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.01.25 02:17:07
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