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テーマ:ニュース(99464)
カテゴリ:外国人の権利
前回の日記の続きになりますが、不法入国、不法滞在は犯罪か?という問題を考えてみたいと思います。
もちろん、不法入国や不法滞在は法には触れますから「違法」ではあります。しかし、法に触れる行為は全て「犯罪」でしょうか。 例えば自動車のスピード違反や駐車違反は道路交通法違反です。しかし、スピード違反を犯すものは犯罪者でしょうか。 未成年者の飲酒喫煙も違法です。では、19歳の大学生が飲酒喫煙を行ったら犯罪者でしょうか。(だとしたら、私自身も含めて日本国民の大半が「犯罪者」になります。社会的な合意としては、高校生までの飲酒喫煙は問題ありと見られますが、高校卒業したら、酒煙草についてはほぼ成人並でしょう) サービス残業(の強要)は労基法違反ですし、是正されなければならないと強く思いますが、しかしサービス残業が横行する企業や指示する経営者は「犯罪企業」「犯罪者」でしょうか。 法に触れる行為の全てについて「犯罪者」とレッテルを貼られるいわれはないのです。 では、不法入国・不法滞在はどうでしょう。 堀江謙一という冒険家がいます。多分多くの方がご存じでしょう。初めて、ヨットで単独太平洋横断を成し遂げた方です。その後も数々の冒険に乗り出していますが、最初の太平洋横断の時(1962年)、彼は日本を密出国したのです。当時、日本は海外渡航を自由化しておらず、ヨットで太平洋横断という彼の冒険計画には、パスポートが発給されなかったのです。 パスポートがないんだから、日本を密出国しただけでなく、米国への到着も密入国です。日本側では、当初、そのことを非難する論調が多かったようで、海上保安庁は、彼が日本に「送還」され次第逮捕する方針と、当時のマスコミには報じられていました。 ところが、海上保安庁や大半のマスコミの論調とは裏腹に、堀江謙一は米国で「密入国」容疑で逮捕されることも送還されることもありませんでした。大冒険を成し遂げた人物として賞賛され、「英雄」として帰国の途に付いたのです。その結果、日本国内でも、彼の「犯罪」を非難する論調は消し飛び、海上保安庁も彼を逮捕はしませんでした。 海上保安庁が、当初は本気で堀江謙一を逮捕するつもりだったことは確実です。事実、その3ヶ月前、金子健太郎という無名の冒険家が、やはりパスポートのないままドラム缶で作った筏で太平洋横断に乗り出したのですが、出発するとすぐに、海上保安庁の巡視船に拿捕されて、密出国の容疑で彼は逮捕されています。 成功と失敗は紙一重です。堀江謙一も、もし日本の領海近辺で巡視船に発見されていれば、同様に拿捕されたことは確実です。逆に金子健太郎が成功していれば、ドラム缶筏ならヨット以上に歴史的快挙となったでしょう。 不法入国を行う者が「犯罪者」だというなら、偉業を成し遂げた堀江謙一も、実際に逮捕された金子健太郎も犯罪者ということになるでしょう。もちろん、私は彼らを犯罪者とはまったく思わないわけですが。 追記 冒険家と不法入国と言えば、植村直己を忘れるわけには行きません。彼は単なる不法入国ではなく、米国で不法就労して捕まった経験があります。ただし、米国の入管職員の温情で強制送還は免れたようですが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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