「鈴、一体どういうつもりだよ、敵と仲良くするなんて!」
八坂神社から帰ってきて、貴に道場に呼び出されて鈴は彼に胸倉を掴まれた。
「俺、英人を敵だとは思ってないよ。」
「なんで・・そんなこと・・」
「俺、初めて英人と会ったとき、こいつとは仲良くなれると確信したんだ・・たとえ敵であっても。」
鈴はそう言って貴を見た。
「お前の言うことは本当だ。英人は俺達の敵だけど、憎むだけじゃ何も変わらない。長州とか幕府とか言っても、元をただせば同じ日本人だろ?日本人同士、殺しあっても何もならないよ。敵同士でも、分かり合えることはできるんじゃないかな?」
「そんなことない!長州の奴らは俺達を殺そうとしている!だから俺達はここにいるんだろ、違うか!?」
「そうだけど・・貴はそれでいいと思ってるの?」
「鈴・・」
鈴の真剣な表情に、貴はうろたえた。
「俺は初めて何の罪もない人を殺した。そのとき感じた自分に対しての怒りや、罪悪感で俺は苦しんだ。でも悲しんでばかりじゃいられない・・生きて俺は楽しい思い出を作らなくちゃいけない・・」
「鈴、お前変わったな・・」
貴はそう言ってさびしげな表情を浮かべた。
「昔のお前は、世間知らずで甘えん坊で泣き虫の、ただのガキだった。けど京に来てからのお前は、俺よりひとまわりもふたまわりも成長してるように見えるぜ。」
「貴・・」
「お前の言うことは信じたい・・けど俺はみんなを騙して正体を隠しているあいつを許せないんだ・・」
貴はそう言って顔を上げた。
「だから・・俺は・・英人を殺す。」
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